民法改正後の5年間と、相続登記義務化が富裕層の資産管理を再設計する
民法改正後の5年間と、相続登記義務化が富裕層の資産管理を再設計する
Koukyuu Realty
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Koukyuu 宅地建物取引士 記事監修アドバイザー

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港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。

2026年4月1日、財産分与の請求期間が離婚後2年から5年へと延長された。同日、住所・氏名変更登記の義務化もスタートした。この二つの法改正が交差するタイミングで、婚姻中に相続を受けた不動産を保有する層は資産保護のフレームワークを見直す必要に迫られている。

特有財産の境界線が曖昧になる三つの実務パターン

民法762条1項は、婚姻中に相続した財産を「特有財産」として財産分与の対象外と定める。しかし実務では、この境界線が崩れるケースが頻出する。

第一に、遺産を夫婦生活費に充当した場合だ。相続した現金を住宅ローンの繰上返済やリフォーム費用に回すと、特有財産と共有財産の混在が生じる。第二に、相続不動産の管理・改修だ。婚姻期間中に行った大規模修繕や賃貸管理の実績が、共有財産化の根拠となる。第三に、相続口座の運用形態だ。相続財産を単独名義で管理せず、夫婦共通の口座に入金した場合、共有財産と認定されるリスクが高まる。

これらのパターンは、特に港区・渋谷区・千代田区の高額不動産を相続した層で顕在化する。評価額が3億円を超える物件では、財産分与の対象範囲を巡る争いは数億単位の金額差を生む。

Koukyuu が対応する相談の中でも、相続後のリフォーム費用の出所や、賃料の受取口座の名義が、後の離婚協議で争点となるケースが増加している。

5年間の請求期間と、不動産流動化のタイミングリスク

2026年4月1日以降に離婚が成立した場合、財産分与の請求期間は5年間となる。2026年3月31日以前の離婚は従来どおり2年が適用される。この延長は、交渉に時間を要する高額不動産の分与において実務上重要だ。

期間延長の裏には、隠匿財産の発見リスクの増大がある。離婚後5年間は、相手方の資産調査と請求の準備期間として機能する。不動産を相続した側としては、この間の資産管理と簿記の整備が求められる。

特に注意すべきは、相続不動産の売却タイミングだ。財産分与請求期間中に売却を行うと、譲渡所得の計算と分与財産の評価額が複雑に絡む。相続税評価額と実勢価格の乖離が大きい都心3区では、この計算の違いが数千万単位の税額差を生む可能性がある。

相続登記義務化と、離婚協議中の名義変更順序

2024年4月1日に施行された相続登記義務化により、相続開始から3年以内の登記申請が義務となった。2026年4月1日からは、住所・氏名変更登記も義務化された。登記怠滞には過料が科される可能性がある。

離婚協議中に相続が発生した場合、「相続→離婚」の順で名義変更を進めることが推奨される。離婚後の名義変更は、書類不備や協議相手の協力欠如で滞るリスクが高い。相続登記を先に完了させておくことで、離婚協議書作成時点で確定した資産構成を提示できる。

実務上、相続登記に必要な書類は、遺産分割協議書または相続人の全員の合意を要する。離婚協議と並行して進めると、相続人の合意形成と離婚配偶者との交渉が二重化し、手続きが長期化する。

配偶者居住権の評価額が公示地価の2割に落ちるとき、資産はどこへ向かうかでは、相続と離婚が連鎖するケースでの居住権評価の動向を検討している。

譲渡所得税と二重課税の回避構造

財産分与で不動産を取得した場合、譲渡所得税が課される条件は厳格だ。取得価格より値上がりしている不動産に対し、譲渡所得が認定される。ただし、居住用不動産であれば3,000万円の特別控除が適用される可能性がある。

問題は、相続税と譲渡所得税の二重課税リスクだ。相続税評価額で取得した不動産を、財産分与で譲渡する際、相続時精算課税の適用有無や、小規模宅地の特例適用状況が譲渡所得の計算に影響する。

具体的には、相続税評価額が3億円、財産分与時の時価が4億円の物件を考える。相続税は3億円で計算され、譲渡所得税は4億円と取得価格の差額で計算される。相続税の課税価格と譲渡所得の取得費の整合性が取れない場合、税務調査で指摘を受けるリスクがある。

この構造は、配偶者控除で税額ゼロにするなら、小規模宅地は誰に残すかで論じた配偶者控除の戦略と絡む。小規模宅地の特例を配偶者に適用した場合、その後の財産分与で譲渡所得税の取得費がどう確定するかは、事前の設計が必要だ。

遺産分割協議書と離婚協議書の分離作成術

富裕層向けの資産保護で最も重要な実務は、二つの書類の分離作成だ。遺産分割協議書と離婚協議書は、税務調査や民事裁判で証拠として提出される。書式、日付、条項の明確な分離が求められる。

具体的な運用手順は以下の通りだ。第一に、相続開始直後に遺産分割協議書を作成し、相続登記を完了させる。第二に、離婚協議に入る際、既に相続登記済みの不動産を財産目録に記載する。第三に、特有財産として財産分与対象外とする条項を明記する。

この順序を逆にすると、離婚協議中に相続が発生した場合、配偶者が相続人として遺産分割協議に介入する余地が生じる。相続人全員の合意が必要な不動産の分割協議で、離婚配偶者が拒否権を行使するリスクがある。

評価基準日の固定と、簿記管理の実務

相続税評価額は、被相続人死亡日の時価で確定する。離婚前後で評価額が変動することはない。この固定性を前提に、相続後の簿記管理を整備すべきだ。

具体的には、相続不動産に係る収支を単独管理する口座を開設する。賃料収入や管理費支出を、婚姻期間中の共有財産と明確に分離する。リフォーム費用は、特有財産の保存行為として記録し、領収書を10年間保管する。

財産分与請求期間中の5年間は、簿記の監査期間とも言える。税務署や裁判所からの照会に対し、相続時点からの資産変動の軌跡を証明できる体制が必要だ。

7年ルール移行期の不動産移転、2026年に決断が迫られる理由では、相続税の申告期限7年後の譲渡所得税計算との関連も論じている。

Koukyuu は麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)はこちらから。

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