
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2026年5月時点で、生前贈与加算期間の段階的延長が進行中である。2026年12月31日までに相続が開始するケースでは従来通り3年分の贈与財産が加算対象だが、翌2027年1月1日以降は7年ルールへ完全移行する。この7年間の「持ち戻し」が課税計算に組み込まれる仕組みは、東京の高級不動産オーナーにとって資産移転の戦略を根本から見直す契機となっている。
2026年12月31日という期限の実質的意味
令和6年度(2024年)税制改正により、生前贈与加算期間の延長が決定した。2026年12月31日までに相続が開始する場合、加算対象は相続開始前3年以内の贈与財産に限定される。2027年1月1日から2030年12月31日までは段階的に拡大され、2031年1月1日以降は完全に7年へ移行する。
延長分(相続開始前4〜7年)については、合計額から100万円を控除した残額のみが加算対象となる緩和措置が設けられている。ただし、この100万円控除は7年分全体で1回のみ適用され、年次ではない。
2026年中に相続が発生するケースでは、2023年1月1日以降の贈与が加算対象となる。仮に2024年1月に1億円の不動産を贈与した場合、2026年12月の相続開始では全額が加算され、贈与税と相続税のダブル課税を回避できない。これが2026年12月31日という期限が持つ実質的意味である。期限後に相続が発生する場合、同じ1億円の贈与でも加算対象期間が7年に広がるため、戦略の再構築が必要となる。
暦年課税と相続時精算課税の分岐点
贈与税の課税方式には暦年課税と相続時精算課税の2つがある。2024年改正後の相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設された。累計2,500万円までは一律20%の税率が適用され、超過部分は暦年課税と同じ累進税率となる。
相続時精算課税を選択すると暦年課税へ戻せない。国税庁タックスアンサーはこの点を明確にしている。選択の不可逆性が、方式決定の重みを増している。
暦年課税の年110万円基礎控除は毎年刷新される。7年ルール下では、毎年110万円ずつ非課税枠を積み上げる戦略が有効となる。2026年中に暦年課税による贈与を開始すれば、2033年以降の相続から7年加算対象となるが、それまでに7年分の非課税枠を確保できる計算になる。
相続時精算課税の優位性は評価の固定化にある。贈与時の評侍額で課税が確定し、相続時の時価上昇分は課税対象外となる。港区や渋谷区の高級物件のように値上がり見込みの高い資産に対して、この固定化効果は大きい。贈与時3億円、相続時4億円の土地で、税率30%を想定すると3,000万円の節税効果が生じる試算もある。
移転コストの具体的な差額
不動産の移転には登録免許税と不動産取得税が発生する。評価額1億円の不動産を比較すると、生前贈与の登録免許税は2%で200万円、相続の場合は0.4%で40万円となる。160万円の差が単純に生じる。
不動産取得税は贈与の場合、土地が1.5%、建物が3%となる。相続では原則非課税である。建物付きの物件で評価額が建物3,000万円、土地7,000万円と仮定すると、贈与時の不動産取得税は90万円+105万円で195万円。相続では0円となる。
さらに小規模宅地等特例は相続時に適用され、最大80%の評価減が可能である。生前贈与ではこの特例を利用できない。付随費用だけで贈与は相続より300万円以上割高となる試算は、単純比較でありながら示唆に富む。
このコスト構造は、贈与を選択する際のハードルとなる。値上がり益が移転コストを上回る見込みがある場合、あるいは相続時のトラブル回避が優先される場合に、贈与の合理性が生じる。
配偶者控除と小規模宅地特例の組み合わせ
婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産贈与には、配偶者控除が適用される。最大2,000万円に年110万円の基礎控除を加え、2,110万円まで非課税となる。この「おしどり贈与」は7年ルールの対象外である。
2,110万円という金額は、東京の高級物件の価格帯から見れば限定的である。ただし、配偶者への贈与と相続の組み合わせで、小規模宅地等特例の適用順序を最適化する余地はある。配偶者が先に居住用不動産を取得し、残りの資産を相続で受け取る構成は、相続税の配偶者控除(1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い方)と小規模宅地特例を両立させる可能性を秘めている。
小規模宅地等特例の適用を受けるためには、相続開始時点で被相続人の所有していた宅地である必要がある。生前贈与で移転してしまうと、この特例が適用できなくなる。誰にどの資産を残すかという配分設計が、税負担を左右する。
2026年期限付き特例の活用余地
住宅取得資金の贈与には期限付きの非課税制度が存在する。省エネ性能等を満たす住宅の場合は1,000万円、一般住宅は500万円が非課税となる。適用期限は2026年12月31日である。
結婚・子育て資金の一括贈与は1,000万円まで非課税で、適用期限は2027年3月31日まで延長された。教育資金一括贈与(1,500万円)は2026年3月末で新規受付が終了している。
これらの特例は、高級物件の購入資金そのものを賄うほどの規模ではない。ただし、購入に伴う付随費用や、別途の資金調達として組み込む価値はある。特に住宅取得資金贈与は、直系尊属からの贈与に限られるため、親から子への資金移動のタイミングとして意識しておくべきである。
資産特性とタイミングの対応関係
値上がり見込みの高い資産、具体的には港区・渋谷区・千代田区の都心3区における優良立地の不動産については、相続時精算課税による評価固定化が有効な選択肢となる。ただし、移転コストの割高さと、小規模宅地等特例の喪失という代償を伴う。
現金・預金・債券など値上がりしにくい資産については、暦年課税による長期分散が合理的である。7年ルール下でも、毎年110万円の非課税枠を継続的に活用することで、最終的な相続財産の圧縮が図れる。
2026年5月時点での判断材料として、自身の健康状態・資産構成・相続人の関係性を総合的に勘案する必要がある。相続開始時期が予測しにくい場合、暦年課税の柔軟性を残しておく価値は大きい。一方で、特定の資産について早期に名義を移転したい明確な理由がある場合、相続時精算課税の選択を検討するタイミングである。
Koukyuu は麻布・広尾・白金・港区・渋谷区・千代田区をはじめとする東京の格式ある住宅地において、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーとして機能している。初回相談、内見、条件交渉、デューデリジェンス、契約、引渡しに至るまで、有資格の宅建士本人が一貫してクライアントに同席する。個別のご相談はこちら)より。
