配偶者居住権の評価額が公示地価の2割に落ちるとき、資産はどこへ向かうか
配偶者居住権の評価額が公示地価の2割に落ちるとき、資産はどこへ向かうか
Koukyuu Realty
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Koukyuu 宅地建物取引士 記事監修アドバイザー

Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修

港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。

2026年5月、港区南青山の築15年、専有面積150㎡のマンションを相続したケースを想定する。配偶者居住権を設定した場合、その評価額は所有権の約35%に留まる。国税庁の算定式によれば、建物評価額1億5,000万円に対し、60歳配偶者の居住権評価額は5,200万円程度となる。この圧縮効果が、高額不動産を抱える世帯の相続戦略を変えている。

2020年4月1日の民法改正と、6年後の実務

配偶者居住権は「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)により2020年4月1日に創設された。施行から6年を経た2026年時点で、制度は相続登記義務化(2024年4月1日施行)との交錯により、新たな複雑性を帯びている。

相続登記義務化により、相続開始から3年以内に不動産の所有権移転登記を完了させなければ過料に処される。配偶者居住権の設定も、この3年の枠組み内で完了させる必要がある。遺産分割協議が長期化するケースでは、期限管理が厳格化されている。

配偶者居住権の成立には4つの厳格な要件がある。法律上の配偶者であること、相続開始時に建物に実際に居住していたこと、建物が配偶者以外の第三者と共有されていないこと、生活の拠点としての居住用建物であること。内縁関係は対象外となる。

評価額の算定式と、都心3区の実数

国税庁の評価基準に基づき、配偶者居住権の価額は以下の要素で算定される。建物の耐用年数(住宅用耐用年数×1.5倍)、経過年数、存続年数(第23回生命表に基づく平均余命)、法定利率による複利現価率。

具体例で示す。渋谷区松濤の築20年、RC造、建物評価額2億円の住宅を、55歳の配偶者が相続する場合。耐用年数は47年(RC造31年×1.5)、残存耐用年数は27年。配偶者の平均余命は32年とすると、存続年数は27年(建物の残存年数が短いため)。法定利率3%での複利現価率を適用すると、配偶者居住権の評価額は約6,800万円、所有権は約1億3,200万円となる。居住権の評価額は所有権の51%に相当する。

築年数が浅い物件では圧縮効果が大きい。港区白金台の築5年、建物評価額3億円の住宅で、同じく55歳配偶者の場合、居住権評価額は約7,500万円、所有権は約2億2,500万円。居住権は所有権の33%に留まる。この差額が相続税の節減に直結する。

取得方法の3ルートと、登記の対抗要件

配偶者居住権の取得には3つの方法がある。遺言による遺贈、遺産分割協議、家庭裁判所の審判。遺言による遺贈が最も確実で、相続人間のトラブルを防ぐ。遺産分割協議は全員の合意が必要。話し合いが不調の場合は家庭裁判所に審判を申し立てる。

登記の重要性を強調する。配偶者居住権は登記をしなければ第三者に対抗できない。建物の所有権移転登記と居住権設定登記の両方を、相続開始から3年以内に完了させる必要がある。登録免許税は、配偶者居住権が0.2%、相続登記が0.4%である。建物評価額1億円の場合、居住権設定登記の税額は2万円、相続登記は4万円。司法書士報酬は5〜10万円前後を見込む。

2027年4月1日が迫る相続登記期限、都心3区の資産価値を守る実務については、別途詳述している。

資産運用への制限と、流動性リスク

配偶者居住権の設定は相続税軽減に有効だが、資産運用に重大な制限を課す。譲渡が原則不可。賃貸もできない。リフォームや増改築には建物所有者の同意が必要。建物の売却が困難になり、市場価値が低下するリスクがある。

固定資産税等の負担義務が発生する点も見落とせない。居住権者は、通常の使用収益に必要な費用を負担する。管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税の分担を、所有者との間で明確化しておく必要がある。

将来の権利放棄には贈与税が発生する可能性がある。居住権を放棄し、所有者から金銭を取得しない場合でも、権利の経済的価値が贈与とみなされるケースがある。生前贈与との組み合わせを検討する際は、この点を留意する。

配偶者控除で税額ゼロにするなら、小規模宅地は誰に残すかについても、併せて検討が必要だ。

二世帯住宅の「ねじれ」と、居住権の限界

親子で二世帯住宅を共有するケースで、配偶者居住権は複雑な問題を生む。親が死亡し、生存配偶者が居住権を取得した場合、子の所有権は事実上凍結される。子が自らの住宅資金にしたい場合、居住権の買取交渉が必要になるが、価格形成に困難を伴う。

建物の老朽化が進み、建て替えが必要になった場合の対応も課題。居住権者と所有者の双方の同意が必要で、交渉が長期化するリスクがある。築30年以上の物件で配偶者居住権を設定する場合は、この点を事前に確認する。

二世帯住宅の融資設計で親子が陥る、出資と持分の「ねじれ」は、別の観点からこの問題を分析している。

2026年の実務判断

配偶者居住権の設定は、相続税軽減と配偶者の居住安定の両立を図る有効な手段だ。ただし、資産の流動性を大きく損なう。60歳以下の配偶者にとっては、存続期間が長く、将来のライフプラン変更に対する柔軟性が失われるリスクがある。

具体的な数値で判断する。建物評価額が2億円を超え、配偶者が60歳以上で、他の相続人との関係に緊張がある場合、居住権の検討価値が高い。逆に、建物が築30年以上で、将来的な売却・建て替えを視野に入れる場合は、所有権の共有分割や、別途の居住用資産の確保を優先する選択もある。

Koukyuu は、麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地において、3億円以上の取扱下限を設けたプライベート・バイヤーズエージェンシーとして、相続を見据えた不動産の取得・保有・承継に関する私的な相談に応じている。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当する体制を持つ。個別のご相談)はこちらから。

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