
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
令和5年に死亡した1,576,016人のうち、相続税の申告を必要としたのは193,861人。課税対象者の割合は約12.3%に留まる。この数字の裏には、基礎控除額という制度設計が存在する。3,000万円に法定相続人の数×600万円を加算するこの計算式は、多くの世帯を非課税領域に留める役割を果たしている。
基礎控除額の計算式と実務上の意義
相続税の基礎控除額は、以下の算式で計算される。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数法定相続人が配偶者1人であれば3,600万円。子1人を加えた2人で4,200万円、子2人の3人で4,800万円となる。被相続人の純資産がこの金額を下回れば、相続税の申告義務自体が発生しない。
この制度の実務的意義は二重にある。第一に、多くの中間層を申告手続きから解放する行政簡素化の側面。第二に、資産規模に応じた累進課税の入口を設ける側面。国税庁の統計が示す12.3%という課税対象率は、この設計が意図した通りに機能している証左である。
ただし、基礎控除額を超える資産規模に達した場合、超過部分に対する税率は10%から55%まで段階的に上昇する。最低税率10%が適用されるのは1,000万円超までの課税価格。最高税率55%は6億円超の課税価格に適用される。
法定相続人の数え方と注意点
基礎控除額を最大化する鍵は、法定相続人の数を正確に算定することにある。ここでは代襲相続、相続放棄、養子縁組という三つの要素が絡む。
代襲相続は、被相続人の子女が先に死亡していた場合、その孫が代わって相続人となる制度。例えば、被相続人に子3人がいるうち1人が死亡し、その子に子(孫)が2人いれば、法定相続人は生存する子2人に加えて孫2人の合計4人となる。基礎控除額は5,400万円に拡大する。
相続放棄は、法定相続人の数に影響を与える。放棄をした者は法定相続人としての資格を失い、基礎控除額の計算から除外される。ただし、代襲相続人が放棄した場合、その代襲相続人の子(被相続人のひ孫)がさらに代襲相続人となる可能性がある。
養子については、養子縁組の時期に応じて扱いが異なる。被相続人の死亡時に既に養子縁組が解消していれば、法定相続人に含まれない。現存する養子は原則として法定相続人となるが、特別養子と普通養子の区別は相続法上は問われない。
生前贈与の加算と7年ルールの影響
令和6年1月1日に施行された相続税法改正は、生前贈与の相続財産への加算期間を3年から7年に延長した。これは相続開始前7年以内に行われた贈与財産を、相続税の課税価格に加算する制度である。
ただし、3年超7年以内の贈与については、総額100万円までが非加算となる救済措置が設けられた。この100万円は各贈与者ごとではなく、贈与を受けた相続人ごとの総額で計算される。
この改正の実務的影響は、早期からの贈与計画の重要性を高めた点にある。7年という長期間を確保するためには、被相続人の健康状態や予測可能な寿命を考慮した上で、60歳代からの贈与実行が現実的となる。さらに、贈与税の基礎控除110万円を年次活用した毎年贈与との組み合わせが、より重要な戦略となる。
相続税の「持ち戻し期間」7年化が富裕層の不動産戦略を書き換えるについては、別稿で詳述している。小規模宅地特例と配偶者控除の併用戦略
基礎控除額を超える資産規模の場合、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減という二つの制度が税額圧縮に寄与する。
小規模宅地等の特例は、被相続人の居住用宅地について330㎡まで80%減額、事業用宅地について400㎡まで80%減額、貸付事業用宅地について200㎡まで50%減額という内容を持つ。東京の高級住宅地では、路線価が1㎡当たり300万円を超えるケースも珍しくない。330㎡の土地が路線価350万円であれば、評価額は約1億1,550万円。80%減額により、課税価格は約2,310万円に圧縮される。
配偶者の税額軽減は、配偶者が取得する財産について、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで非課税とする制度。これは税額軽減であり、基礎控除とは別次元で機能する。
重要な点は、これらの特例を適用して税額がゼロになった場合でも、申告義務が残るケースがあること。小規模宅地等の特例を適用するためには、申告書への添付書類提出が必要となる。申告期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内である。
配偶者控除で税額ゼロにするなら、小規模宅地は誰に残すかの検討は、相続開始前からの準備が不可欠である。港区・渋谷区の不動産と相続税の実態
Koukyuu が取り扱う港区・渋谷区・千代田区の高級不動産市場では、基礎控除額の問題は現実的な課題として頻繁に浮上する。2026年4月時点で、港区の新築マンション平均価格は1億2,840万円。渋谷区は1億5,600万円。これらの数値は、単一の不動産のみで基礎控除額を大きく超える水準にある。
さらに、これらの地域では相続税評価額と実勢価格の乖離が顕著になる。公示地価や路線価は実勢価格の70〜80%程度で評価されることが多く、節税効果を伴う資産承継が可能となる。ただし、評価の適正性については税務調査のリスクを常に勘案する必要がある。
3億円以上の不動産取引を専門とするKoukyuuでは、クライアントの相続税負担を見据えた物件選定を行う。取得時の価格が将来の相続税評価額の基礎となるため、初期の選定が後世への資産承継を左右する。
申告不要と申告必要の境界線
基礎控除額以下であれば申告不要。これは明確なルールである。ただし、以下のケースでは注意が必要。
第一に、小規模宅地等の特例を適用する場合。特例適用により税額がゼロになっても、申告書への記載と添付書類が必要となる。
第二に、相続放棄をする場合。放棄の申述は家庭裁判所への申立てが必要であり、単なる申告書の不提出では済まない。さらに、放棄をした者が受け贈与していた財産については、相続財産に加算されるケースがある。
第三に、保険金や退職金の非課税枠を活用する場合。生命保険金については法定相続人の数×500万円まで、退職金については法定相続人の数×500万円までが非課税となる。これらを合算した上で基礎控除額との比較が必要となる。
令和6年の法改正以降、生前贈与の加算期間延長により、申告書の記載事項はより複雑になった。7年間の贈与履歴の把握、100万円の非加算枠の計算、各種控除の適用順序。これらを整理するためには、相続開始前からの記録管理が不可欠となる。
団信に頼らない住宅ローン設計が、相続税を35万円変える事例も、同様の視点から検討に値する。Koukyuu は白金台・麻布・広尾をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)より。
