
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2022年12月に国税庁が発表した「相続税の申告実績の概要」によれば、申告対象となった遺産の平均額は1億2,014万円、対する相続税額の平均は1,439万円だった。これを単純除算すると、実効税率は11.98%となる。表面税率の最高55%とは大きく乖離するこの数字が、東京の富裕層にとって不動産継承の実質的な税負担を示している。
実効税率の計算式と国税庁の4ステップ
実効税率は「相続税額÷課税価格の合計」で算出される実質的な負担率である。国税庁が定める相続税計算は、以下の4ステップで進める。
ステップ1:課税価格の計算各相続人の取得財産に、相続開始前7年以内の贈与財産を加算し、債務等を控除する。2024年1月1日以降の贈与については、相続財産への加算期間が3年から7年へ段階的に延長された。ただし、3年超から7年以内の贈与については、合計額から100万円を差し引いた金額のみを加算する優遇措置が設けられている。
ステップ2:課税遺産総額の算出課税価格の合計から基礎控除を差し引く。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算される。法定相続人が配偶者と子2人の3人であれば、基礎控除は4,800万円となる。
ステップ3:法定相続分での仮計算課税遺産総額を法定相続分で按分し、速算表を適用して税額を算出する。この段階では、実際の相続割合ではなく法律上の相続分を用いる。
ステップ4:実際の取得割合で按分算出された相続税総額を、実際の取得割合で配分し、配偶者控除や未成年者控除などの税額控除を適用する。最終的な税額を課税価格の合計で除算した率が、実効税率となる。
限界税率との違いと使い分け
相続税の文脈で頻出する「限界税率」と「実効税率」は、目的が異なる。
限界税率は、速算表に基づく表面税率(10%~55%の8段階)を指す。課税遺産総額が6億円を超える部分には55%の税率が適用される。この限界税率は、生前贈与の節税効果を測定する際に用いる。 実効税率は、実際の税額を遺産総額で割った率である。相続税の実質的な負担感を把握し、相続人間での負担配分を検討する際に用いる。例えば、課税遺産総額が5億円で法定相続人が配偶者と子1人の2人の場合、限界税率は40%に達する。しかし、配偶者控除の適用後、子が実際に負担する相続税額を遺産総額で割ると、実効税率は15%前後に収まる。この乖離が、節税戦略の設計において重要な意味を持つ。
2026年実効税率早見表と具体的なシミュレーション
以下は、配偶者が法定相続分(1/2)を取得し、残りを子等が均等に相続する前提での実効税率早見表である。
| 正味遺産額 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
|---|---|---|---|
| 1億円 | 3.9% | 3.2% | 2.6% |
| 2億円 | 8.4% | 6.8% | 5.9% |
| 3億円 | 11.4% | 9.5% | 8.5% |
| 5億円 | 15.2% | 13.1% | 12.1% |
具体的な数値で確認する。正味遺産額2億円、法定相続人が配偶者と子1人の場合、課税遺産総額は1億1,200万円(基礎控除4,800万円控除後)となる。法定相続分で按分し速算表を適用すると、相続税総額は1,760万円。配偶者が法定相続分を取得する場合、配偶者控除により納税額は0円となる。子が残り全てを取得すると、子の納税額は1,760万円。これを遺産総額2億円で除算すると、実効税率は8.8%となる。
相続税の基礎控除額が4,200万円から始まる理由については、別記事で詳しく解説している。7年持ち戻しルールと贈与加算の留意点
2024年1月1日以降に開始された相続について、生前贈与の相続財産への加算期間は7年となった。これは、短期間での大量贈与による節税を抑制するための措置である。
ただし、3年超から7年以内の贈与については、合計額から100万円を差し引いた金額のみを加算する。例えば、相続開始6年前に1,000万円を贈与した場合、加算されるのは900万円となる。
このルールは、不動産の生前贈与タイミングに直結する。路線価や公示地価の上昇局面であれば、早期の贈与が実効税率の低減につながる可能性がある。一方、相続開始が近い場合は、7年ルールによる加算を考慮した上で、贈与と相続のトータル税負担を比較する必要がある。
配偶者控除で税額ゼロにするなら、小規模宅地は誰に残すかについても、併せて検討すべきポイントである。都心不動産と実効税率の乖離構造
港区・渋谷区・千代田区の高額不動産を保有する層にとって、実効税率の低さは資産継承の構造上、重要な意味を持つ。
相続税の課税価格は、原則として時価に基づく。しかし、不動産については相続税評価額が用いられ、これは実勢価格と比較して2~3割低い場合が一般的だ。例えば、時価5億円のマンションが、相続税評価額で3億5,000万円と評価されれば、課税遺産総額は実質的に圧縮される。
この評価額の乖離に、実効税率の低さが重なる。表面税率55%が課されることは少なく、多くのケースで実効税率は10%~15%程度に収まる。結果として、都心の優良不動産は、相続税の観点からも資産保全に適したツールとして機能している。
ただし、これはあくまで現行制度下の話である。相続税評価額の見直しや、実効税率の引き上げ議論は、税制改正の文脈で常に存在する。2026年時点では、相続税の基礎控除や税率構造に大幅な変更は見られないが、中長期的な資産設計では、制度変更のリスクを織り込んだシミュレーションが求められる。
Koukyuu が対応する物件は、相続税評価額と実勢価格の乖離が大きいエリアに集中する。麻布・広尾・白金の優良物件について、実効税率を含めたトータルシミュレーションの相談を受け付けている。
Koukyuu は麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)よりお問い合わせください。
