
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2022年5月18日に施行されたデジタル改正により、37条書面の電磁的交付が解禁されて4年が経過した。2026年4月時点で、港区や渋谷区の高額売買契約においても電子契約サービスを用いた交付が標準的な選択肢となっている。それでも、37条書面そのものの法的構造、とりわけ「説明義務の有無」について、買主側が正確に把握していないケースは少なくない。宅地建物取引業法が定める交付義務の射程と、実務上の留意点を整理する。
37条書面に説明義務は存在しない
宅地建物取引業法第37条は、宅建業者に対して売買・交換・貸借の契約成立後、遅滞なく契約内容記載書面を交付することを義務付けている。ここで確認すべき核心は、交付義務はあるが、説明義務は法律上存在しないという点だ。
35条書面(重要事項説明書)は、宅建士が契約成立前に口頭で説明することが宅建業法上の必須要件であり、宅建士以外の者が説明することは認められない。これに対して37条書面は、宅建士が記名さえすれば、交付・説明の行為そのものは宅建士以外の従業員が行っても違法とはならない。
押印については、2022年の改正により不要となった。記名義務は残るため、宅建業者は必ず宅建士をして37条書面に記名させなければならない。複数の宅建業者が関与する取引、たとえば売主側・買主側それぞれに媒介業者がいる場合は、すべての宅建業者がそれぞれ宅建士をして記名させる必要がある。
37条書面の交付義務と説明義務|2026年高額不動産取引の実務整理では、取引態様別の交付先についてより詳細に解説している。37条書面の絶対的記載事項
宅建業法が定める37条書面の記載事項は、絶対的記載事項と任意的記載事項に分かれる。絶対的記載事項は、定めの有無にかかわらず必ず記載しなければならない内容であり、記載漏れは宅建業法違反となる。
売買・交換契約における絶対的記載事項は以下の6項目だ。
3番目の項目は、中古物件の売買において特に重要な意味を持つ。インスペクション(建物状況調査)を実施した場合、その結果が当事者双方の確認事項として37条書面に反映されなければならない。港区や白金台の築30年超の高級戸建てを取得する際、インスペクション結果の記載内容が契約後の紛争予防において実質的な機能を果たす。
賃貸借契約(貸借)の場合、移転登記申請の時期と既存建物の確認事項は記載対象外となる。売買契約と賃貸借契約で絶対的記載事項の構成が異なる点は、実務上の確認ポイントだ。
重要事項説明書の解説2026:宅建士証・IT重説・高額取引の実務チェックポイントも合わせて参照されたい。35条書面との対比で理解する37条書面の位置づけ
37条書面の性格を正確に把握するには、35条書面との構造的な違いを押さえることが有効だ。
| 項目 | 35条書面(重要事項説明書) | 37条書面(契約書) |
|—|—|—|
| 交付時期 | 契約成立前 | 契約成立後、遅滞なく |
| 説明義務 | あり(宅建士が口頭説明必須) | なし |
| 説明者 | 宅建士のみ | 誰でも可 |
| 記名 | 宅建士 | 宅建士 |
| 交付相手 | 買主・借主のみ | 両当事者 |
35条書面は買主・借主側への情報提供を目的とするため、売主・貸主には交付義務がない。37条書面は契約内容の確定記録として機能するため、売主・買主の両当事者に交付する必要がある。媒介の場合は、媒介業者が契約の各当事者全員に交付しなければならない。
説明義務の有無が最大の差異であることは前述のとおりだが、この構造は買主にとって重要な含意を持つ。35条書面の段階では宅建士による口頭説明が法的に保証されているが、37条書面の交付段階では、内容を精査する責任は実質的に受領者自身にある。3億円を超える高額取引では、37条書面が数十ページに及ぶことも珍しくなく、買主側の自主的な精査が不可欠となる。
【2026年度最新】37条書面の覚え方は?記載事項や重要事項説明書との違いを解説(日建学院)も、法令上の整理として参考になる。任意的記載事項と違約金・天災条項の実務
任意的記載事項は、当事者間で定めがある場合にのみ記載が必要となる項目だ。売買契約における主な任意的記載事項は以下のとおり。
- 代金・交換差金以外の金銭の授受に関する定め(手付金の額・性質等)
- 契約解除に関する定め
- 損害賠償額の予定・違約金に関する定め
- 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め(危険負担)
- 瑕疵担保責任・契約不適合責任の履行に関する措置
- 割賦販売の場合の金銭の支払いに関する定め
違約金条項と天災条項は、高額取引において特に精査が求められる。売買代金が5億円を超える取引では、違約金の設定額が数千万円規模に達することがある。天災条項については、引渡し前に物件が滅失・毀損した場合の危険負担をどちらが負うかを明確に定めておくことが、事後の紛争を防ぐ。
手付金については、宅建業者が売主となる場合、宅建業法上の手付金等の保全措置が別途義務付けられており、37条書面への記載内容と保全措置の実施状況が整合していることを確認する必要がある。
電子交付と2026年の実務動向
2022年5月18日施行の改正により、宅建業法第37条第4項・第5項に基づき、相手方の承諾を得た場合に電磁的方法による37条書面の交付が認められるようになった。2026年4月時点で、電子契約サービスを用いた交付は高額不動産取引においても定着しつつある。
電子交付の要件として、相手方の事前承諾が必要であり、承諾なしに電磁的方法のみで交付することは宅建業法違反となる。電子署名の有効性や改ざん防止措置についても、交付前に確認しておく必要がある。
違反時のペナルティは明確だ。37条書面の交付義務違反は、業務停止処分の対象となり、情状が重大な場合は免許取消に至る。刑事罰として宅建業法第83条に基づく50万円以下の罰金も規定されている。宅建業者としての行政処分と刑事罰が並立して適用される可能性がある点は、取引関係者全員が認識しておくべき事項だ。
電子交付の実務については、宅建士重説の2026年最新実務:改正対応と高額取引で確認すべき論点でも詳しく取り上げている。
高額取引における37条書面の精査ポイント
3億円以上の売買契約において、37条書面の精査で特に注意すべき論点を整理する。
物件表示の正確性登記簿上の所在・地番と37条書面の記載が一致しているか。土地・建物の双方について確認する。分筆・合筆が絡む取引では、物件特定の記載が不十分なまま契約成立に至るリスクがある。
引渡し時期と移転登記申請時期の連動引渡し時期と移転登記申請時期は別個の記載事項だが、実務上は連動して設定される。決済日・引渡し日・登記申請日の三者が37条書面上で整合していることを確認する。
既存建物の確認事項の記載中古物件の売買では、インスペクション結果を含む「構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項」が絶対的記載事項となる。インスペクションを実施しなかった場合でも、「実施していない」旨を双方が確認した事実として記載することが求められる。
違約金と損害賠償予定額の水準高額取引では、違約金の設定が売買代金の10%から20%の範囲で設定されることが多い。5億円の物件であれば5,000万円から1億円の違約金が条項として盛り込まれる場合がある。この金額の妥当性と、解除権行使の条件を37条書面の記載内容から精査する。
手付金の性質と保全措置手付金が解約手付か違約手付かの区別、および宅建業者が売主の場合の保全措置の内容が37条書面に正確に反映されているかを確認する。
説明義務がないからこそ、37条書面の内容精査は買主側の自律的な判断に委ねられる。Koukyuu では、初回相談から契約・引渡しに至るすべての段階に有資格の宅建士本人が同席し、37条書面の記載内容についても専門的な観点から確認を行う体制を採っている。
Koukyuu は表参道・青山・元麻布をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)はこちらから。
