10.21%の源泉徴収が、高級物件取引の決済日を動かす
10.21%の源泉徴収が、高級物件取引の決済日を動かす
Koukyuu Realty
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Koukyuu 宅地建物取引士 記事監修アドバイザー

Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修

港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。

2026年5月、港区のタワーマンション市場で新たな動きが生じている。非居住者売主を抱える物件の決済が、月末から月初にずれ込むケースが増えている。原因は買主に課せられる源泉徴収の納付期限、翌月10日にある。

所得税法第212条に規定されるこの制度は、高級物件取引において決済日の選択自体を変えつつある。3億円、5億円、10億円を超える取引では、10.21%の計算が生む現金の動きは無視できない規模となる。

源泉徴収義務の発生条件と対象範囲

非居住者・外国法人から国内の土地、建物、借地権等を購入する場合、買主(支払者)は譲渡対価の10.21%を源泉徴収し、翌月10日までに納付する義務を負う。所得税10%に復興特別所得税0.21%を加算した税率である。

対象となるのは土地および土地の上に存する権利、建物および付属設備、構築物まで含まれる。エアコン、給湯器、塀、門扉、舗装といった付帯物も対象となる点に留意が必要だ。

この義務は個人購入者にも法人購入者にも等しく課される。多くの買主が誤解するのは、自身が居住者であることを理由に源泉徴収が免除されると考える点である。買主の居住性ではなく、売主の居住性が判断基準となる。

1億円以下の例外と高級物件の実態

個人が自己または親族の居住用として購入し、かつ譲渡対価が1億円以下の場合のみ、源泉徴収が免除される。法人購入、投資用、業務用の場合は金額に関わらず徴収義務が生じる。

Koukyuuの取扱物件は下限3億円である。この金額帯において、1億円以下の例外規定が適用されることは事実上ない。3億円の取引であれば源泉徴収額は3,063万円、5億円で5,105万円、10億円で1億210万円となる。

この現金の一時的な流出は、単なる税務手続きの問題ではない。決済日の翌月10日までの納付を前提に、資金繰りの計画を立てる必要がある。決済日が月末に近いほど、納付準備の猶予は短くなる。

国外支払いと「みなし国内支払」ルール

売主が海外在住で、売買代金を国外の銀行口座に振り込む場合でも、買主が国内に住所または事務所を有すれば源泉徴収義務は消滅しない。これを「みなし国内支払」と呼ぶ。

支払場所が国外であっても、支払者の国内所在によって国内源泉所得とみなされる。納付期限は通常の翌月10日ではなく、翌月末日となる点が異なる。この期限の違いは、決済日の選択に影響を与える。

海外送金に伴う為替リスク、銀行手数料、到着遅延の可能性も加味すると、国外支払いのケースでは決済日の設定にさらに注意が必要となる。実務上、国外支払いを伴う取引では決済日を月初に設定し、翌月末日の納付期限を確保する動きが見られる。

非居住者売主の還付申告と納税管理人

源泉徴収額10.21%は暫定税額に過ぎない。実際の譲渡所得、すなわち譲渡価額から取得費と譲渡費用を控除した金額に対する確定税額と比較し、還付を受けることができる。

還付申告の期間は譲渡年の翌年1月1日から5年間である。2026年5月に譲渡した場合、2031年12月31日までに申告すればよい。この期限は譲渡所得の申告期限である3月15日とは異なる点に注意が必要だ。

還付申告を行うには納税管理人の選任が必須となる。国税通則法第117条に基づき、非居住者は国内に納税管理人を置かなければ還付を受けられない。納税管理人は税理士に限らず、国内に住所を有する自然人または法人でも可能である。

居住用財産の3,000万円特別控除の適用可能性も検討すべき点だ。ただし、この控除を受けるには譲渡時点で住まなくなった日から3年以内である必要がある。長期間海外在住の売主には適用されないケースが多い。

購入者側のリスク管理と実務上のチェックポイント

購入者にとって最大のリスクは源泉徴収の失念である。義務を履行しなかった場合、本来差し引くべき税額を購入者自身が負担することになる。加算税、延滞税の可能性も生じる。

決済前の確認事項は以下の3点に集約される。

第一に、売主の居住者ステータスの確認である。住民票の有無、日本国内の居住期間、パスポートの査証歴などから総合的に判断する。売主の申告だけに依存せず、客観的証拠を収集する。

第二に、契約書への源泉徴収条項の明記である。売主が非居住者である場合の取り扱い、徴収額の計算方法、納付責任の所在を明確にする。口頭の合意ではなく、書面に残すことが後の紛争防止になる。

第三に、決済日と納付期限の整合性である。月末決済の場合、翌月10日までの準備期間は極めて短い。月初決済を検討し、納付準備の猶予を確保する。特にゴールデンウィーク、年末年始を跨ぐ決済では注意が必要だ。

引渡し日を境に動く税金の境界線、3億円物件の精算で生じる実務の隙間については、別稿で詳述している。

還付申告の実務と譲渡所得の計算

非居住者売主が還付申告を行う際、譲渡所得の計算は以下の式に従う。

譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用

取得費は購入時の価額に対し、建物については減価償却を考慮する。譲渡費用は仲介手数料、印紙税、測量費用、司法書士報酬などが含まれる。

譲渡所得に対する税率は、短期譲渡所得(所有期間5年以下)で39.63%、長期譲渡所得(所有期間5年超)で20.315%となる。これに対し、源泉徴収額は一律10.21%である。

短期譲渡の場合、確定税額が源泉徴収額を上回るため還付ではなく追加納税が生じる。長期譲渡の場合、取得費や譲渡費用が十分に積み上がっていれば還付の可能性がある。

譲渡所得の特別控除、5,000万円の上限が東京の高額不動産で生む選択の重みについても参照いただきたい。

2026年の税制動向と今後の展望

2026年4月以降、消費税の輸出免税適用対象から、非居住者に対する国内不動産に係る役務提供が除外された。不動産賃貸管理サービス等が課税対象となる変更である。

この変更は譲渡所得の源泉徴収とは直接関係しないが、非居住者を巻き込む不動産取引全体の税務環境が厳格化していることを示している。国税庁の情報把握体制の強化も進んでおり、申告漏れのリスクは増大している。

非居住者売主を抱える取引では、税理士、司法書士、宅建士の連携がより重要になる。各専門家の責任範囲を明確にし、情報共有の体制を構築することが、スムーズな決済の前提となる。

Koukyuuは、麻布・広尾・白金・港区・渋谷区・千代田区・表参道・青山・六本木ヒルズ・麻布台ヒルズ・北青山・西麻布・南青山・白金台・元麻布・代官山・番町・松濤を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)はこちらから。

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