譲渡所得の特別控除、5,000万円の上限が東京の高額不動産で生む選択の重み
譲渡所得の特別控除、5,000万円の上限が東京の高額不動産で生む選択の重み
Koukyuu Realty
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Koukyuu 宅地建物取引士 記事監修アドバイザー

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港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。

2026年5月時点で、港区の新築マンション平均価格は坪単価1,200万円を突破している。麻布台ヒルズレジデンスや六本木ヒルズレジデンスのような物件を売却した場合、譲渡益が数億円に達することは珍しくない。この規模の取引において、譲渡所得の特別控除をいかに組み合わせるかは、納税額に数千万円の差を生む。

国税庁の法令情報によれば、譲渡所得の特別控除には年間5,000万円という合算上限が設けられている。この上限の中で、どの控除をどの順序で適用するか。さらに、居住用財産に関しては「選択適用」となる関係が複数存在し、併用できない組み合わせもある。本稿は2026年時点の制度を整理し、高額不動産の売却に際して検討すべき実務的ポイントを示す。

特別控除の体系と5,000万円の上限構造

譲渡所得の特別控除は、根拠となる法令ごとに独立した制度として設計されている。国税庁「譲渡所得の特別控除の種類」に示される主な控除は以下の通りだ。

特例控除額根拠法令
収用等5,000万円措法33の4
居住用財産(マイホーム)3,000万円措法35条
特定土地区画整理事業等2,000万円措法34
特定住宅地造成事業等1,500万円措法34の2
農地保有合理化等800万円措法35の2

これらの控除は、同一の年間における譲渡益全体を通じて合計5,000万円が限度となる。つまり、収用による5,000万円控除を全額適用した年に、マイホームの3,000万円控除は適用できない。

控除の適用順序も法令で定められている。収用等(1)→マイホーム(2)→土地区画整理(3)→住宅地造成(4)→農地等(6)の順に適用される。この順序は納税者の選択ではなく、強制的な適用順である。収用とマイホームの両方の要件を満たす場合、収用の5,000万円が先に適用され、残りの控除枠がないためマイホームの3,000万円は適用されない。

ただし、収用等の控除を受けるには、譲渡の対象が「収用、交換等」に該当することが必要である。都市計画事業による土地の収用や、土地区画整理事業における権利変換などが該当する。単純な売買ではこの控除は適用できない。

居住用財産の特例における選択適用の関係

マイホームの売却に関しては、複数の特例が選択適用の関係にある。これらは併用できず、納税者が最も有利な制度を選ぶ必要がある。

国税庁「重複適用できない譲渡所得の特例」に列挙される制度は以下の通りだ。

  • 居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35条1項):3,000万円控除
  • 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率(措法31条の3)
  • 特定の居住用財産の買換え特例(措法36条の2)
  • 特定の居住用財産の交換特例(措法36条の5)

ここで注意すべきは、3,000万円控除と軽減税率は併用できるという点である。誤解されやすいが、これらは選択適用の関係にない。所有期間が10年を超える居住用財産を売却した場合、3,000万円控除を適用した上で、残った課税譲渡所得に対して軽減税率が適用される。

具体的に数値を示す。売却価格が2億円、取得費と譲渡費用が1億円と仮定すると、譲渡益は1億円となる。3,000万円控除を適用すると課税譲渡所得は7,000万円。所有期間が10年を超える場合、この7,000万円に対して税率は14.21%(所得税10.21%、住民税4%)となり、税額は約994万円となる。軽減税率が適用されなければ税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)となり、税額は約1,422万円となる。差は約428万円に達する。

買換え特例や交換特例を選ぶ場合、譲渡所得の課税が繰り延べられる。しかし、買換えで取得した資産を将来売却する際、取得価額は差し引かれた譲渡所得を基準として計算されるため、実質的な節税効果は一時的なものとなる。キャッシュフローと総節税額を比較した上での選択が必要だ。

譲渡損失特例との併用制限と2026年の期限

譲渡益だけでなく、譲渡損失が生じた場合の特例も重要だ。「特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」(措法41の5の2)は、譲渡損失を他の所得との損益通算に充てたり、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除したりできる制度である。

この特例の譲渡期限は令和7年12月31日までである。2026年5月時点で、この特例が適用できるのはあと1年7か月となる。

譲渡損失特例と3,000万円控除は選択適用の関係にある。両方の要件を満たす場合、どちらを適用するかを選ぶ必要がある。損失が出ている状況で3,000万円控除を選んでも、控除額は譲渡所得を超えることはできない。つまり、損失がある場合は3,000万円控除を選むメリットはなく、譲渡損失特例を選ぶのが原則となる。

ただし、買換えを予定している場合は状況が複雑になる。譲渡損失特例を適用した場合、買換え特例は原則として適用できない。逆に、買換え特例を選んだ場合、譲渡損失は繰り延べられず、取得価額への繰り込みとなる。どちらが有利かは、損失額、買換え資産の価格、将来の売却時期などを総合的に見極める必要がある。

住宅ローン控除との併用制限

居住用財産の譲渡特例と住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の関係も、選択適用の問題として現れる。

住宅ローン控除を受けるには、入居した年、前年、前々年のいずれにおいても、居住用財産の譲渡特例(3,000万円控除、軽減税率、買換え特例、交換特例を含む)を適用していないことが必要となる。つまり、マイホームを売却して買い替えた場合、売却側で3,000万円控除や買換え特例を使うと、新しい住宅の住宅ローン控除は受けられない。

この制限は、買換えを検討する際の重要な検討要素となる。売却益に対する3,000万円控除と軽減税率のメリットと、新規住宅に対する住宅ローン控除(最大13年間、年間40万円まで)のメリットを比較する必要がある。

例えば、売却益が5,000万円あり、新規住宅のローン残高が1億円ある場合を考える。3,000万円控除と軽減税率を適用すると、譲渡所得税は約284万円(課税譲渡所得2,000万円×14.21%)となる。一方、買換え特例を選んで住宅ローン控除を受ける場合、譲渡所得税は繰り延べられるが、年間40万円×13年間で520万円の税額控除が得られる。ただし、買換え特例を選ぶと、将来の新規住宅の売却時に取得価額が低くなるため、譲渡益が増える。

この計算は、現在の税率、将来の税率変更の可能性、キャッシュフローの重みなどを含めた総合的判断が必要だ。相続税取得費加算の特例が、港区・渋谷区の高額不動産で機能する条件についても、売却時の取得費計算と関連して検討すべき点がある。

収用・土地区画整理とマイホームの組み合わせ

収用等の5,000万円控除とマイホームの3,000万円控除を同一年度で適用したい場合、5,000万円の上限に抵触する。しかし、異なる年度に跨れば、それぞれの上限額を独立して活用できる。

より実務的なシナリオは、土地区画整理や住宅地造成による権利変換とマイホーム売却の組み合わせだ。特定土地区画整理事業等の2,000万円控除とマイホームの3,000万円控除を合わせれば、ちょうど5,000万円に達する。同一年度に両方の譲渡があれば、合計5,000万円までの控除が可能となる。

ただし、土地区画整理事業等の控除を受けるには、事業の認可や公告など、一定の手続き上の要件を満たす必要がある。単に土地が区画整理区域に含まれるだけでは不十分で、権利変換計画の認可を受けた時点から譲渡計画を立てる必要がある。

また、収用等の控除を受けた場合、買換え特例や交換特例との関係も制限される。収用等の控除を適用した資産の買換えには、別途の特例規定(措法33の4第5項)が適用されるが、これらの併用可能性もケースバイケースで判断が必要だ。

高額不動産売却における実務的検討ポイント

3億円を超える高額不動産の売却を検討する際、特別控除の選択は以下のステップで進めるのが実用的だ。

第一に、譲渡益の見積もりを正確に行う。取得費の計算において、令和6年改正が変えた相続時精算課税、不動産贈与で110万円の基礎控除が実務的に何を意味するかで触れている相続時精算課税の選択や、取得費加算特例の適用有無は、取得費の額を大きく変える。

第二に、譲渡損失の可能性を検討する。売却価格が想定を下回った場合、譲渡損失特例の適用が検討対象となる。この特例の期限が令和7年12月31日であることを考慮し、譲渡時期の調整も戦略的に検討する価値がある。

第三に、買換えまたは交換の有無を確認する。買換えを予定している場合、買換え特例、3,000万円控除+軽減税率、譲渡損失特例のいずれを選ぶかが、長期的な節税額に影響を与える。単年度の納税額ではなく、買換え後の資産を最終的に売却するまでの総税額で比較する必要がある。

第四に、住宅ローン控除との関係を確認する。買換え後の住宅で住宅ローン控除を受ける予定がある場合、売却側でどの特例を選ぶかが制限される。

第五に、収用・土地区画整理等の控除の有無を確認する。所有資産のうち、都市計画事業や区画整理事業の対象となっているものがあれば、譲渡時期の調整によって控除額を最大化できる可能性がある。

これらの検討は、売却の数年前から着手する必要がある。特に、取得費加算特例を適用するためには相続税の申告が必要であり、譲渡損失特例の期限も迫っている。売却を具体化する段階で初めて検討を始めると、選択肢が限られてしまう。

Koukyuu は、麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)よりお問い合わせください。

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