
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2025年に東京都内で供給された新築億ションは5,947戸。前年比62.5%増で1973年以降の過去最多を更新した(東京カンテイ調査、日本経済新聞2026年4月1日報道)。これだけの高額物件が市場に流入する局面で、宅建士による重要事項説明の質が取引の安全を左右する。2025年6月の刑法改正連動を皮切りに、宅建業法は複数の実務変更を経た。2026年4月時点の最新ルールを整理する。
重要事項説明は宅建士じゃなくてもできる?
結論から言う。重要事項説明を行えるのは宅建士のみであり、無資格の営業担当が代行することは宅建業法第35条の規定上できない。
同条は、宅建業者が売買・賃貸の契約締結前に買主または借主に対して重要事項を説明する義務を定める。説明の際には宅建士証を相手方に提示し、重要事項説明書(35条書面)に宅建士が記名したうえで交付することが必須要件だ。重要事項説明を宅建士以外が行った場合、宅建業法違反として業者は監督処分の対象となる。
一点だけ例外がある。相手方が宅建業者である場合、説明そのものは省略できる。ただし書面の作成と交付、そして宅建士の記名は省略できない。
重要事項説明書に宅建士証は必要か
宅建士証は重要事項説明書の書面自体に添付するものではない。宅建士が説明の場で相手方に提示することが義務付けられている。書面への記名・押印(または電子署名)は別途必要であり、宅建士証の提示と書面への記名は別個の要件として理解する必要がある。
IT重説の場合も同様で、宅建士証を画面に提示し相手方が視認できることが4要件の一つに含まれる。この提示を省略した状態で実施した場合は宅建業法違反となる。
買主側から見れば、説明者の資格確認と宅建士証の提示要求は取引開始時の最低限の確認事項だ。
2026年時点の宅建業法改正:実務に直結する変更点の解説
拘禁刑への文言変更(2025年6月1日施行済)
2022年6月成立の刑法改正により、2025年6月1日から「懲役刑」「禁錮刑」が廃止され「拘禁刑」に一本化された。宅建業法の欠格事由条文も連動して改正されており、免許欠格事由を定める第5条第1項第5号および宅建士登録の欠格事由を定める第18条第1項第6号の文言がそれぞれ「拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」に改まった。条文の実質的な内容は変わっていないが、契約書類や重要事項説明書の記載において旧来の文言を使い続けることは適切でない。
標識・名簿・申請手続きの変更
2025年改正では実務上の細部も複数変更された。事務所に掲示する標識の記載事項について、従来は専任宅建士の氏名を記載する必要があったが、改正後は専任宅建士の人数と代表者氏名の記載に変わった。業者名簿および従業者名簿への住所・性別・生年月日の記載は不要となった(禁止ではなく任意)。国土交通大臣免許の申請経路も変更され、従来は都道府県知事を経由して申請していたが、国土交通省地方整備局への直接申請に改められた。
建物状況調査の有効期間延長
重要事項説明書の記載事項に含まれる建物状況調査(インスペクション)の有効期間について、共同住宅のみ2年以内に延長された。戸建住宅は従来どおり1年以内のままである。港区・渋谷区の高額マンション取引では共同住宅の調査報告書を参照するケースが多く、この変更は実務上の確認業務に直接影響する。
35条書面の記載事項と高額取引での確認優先度
重要事項説明書に記載すべき事項は、宅建業法第35条および同施行規則によって列挙されている。売買取引における主な記載事項と、高額取引での確認優先度を以下に整理する。
登記に関する事項:登記簿上の権利関係、抵当権・差押えの有無。高額取引では複数の担保権が設定されていることも珍しくない。引渡し時までにすべて抹消されることを条件として盛り込み、重説時点での登記内容と引渡し直前の登記内容を必ず照合する。 都市計画法・建築基準法に基づく制限:用途地域、建ぺい率、容積率、高度地区、日影規制、地区計画の有無。麻布台ヒルズ周辺の元麻布・西麻布エリアや、南青山・北青山の一部では地区計画による独自の制限が重なっている。これらを正確に記載しなければ、将来の増改築計画に支障をきたす。 手付金等の保全措置:宅建業者が売主の場合、手付金の額が売買代金の5%または1,000万円を超えるときは保全措置が必要となる。3億円以上の取引では手付金だけで数千万円規模になることが多く、保全措置の内容を重説時に明確に説明することが買主保護の核心となる。 石綿使用調査・耐震診断・住宅性能評価の有無:調査が実施されていない場合でも「未実施」として記載が必要だ。2026年度税制改正大綱(2025年12月19日決定)では、省エネ性能を有する既存住宅に対する住宅ローン控除が拡充され、借入限度額が最大4,500万円・控除期間13年に引き上げられた。性能証明書の有無によって控除総額に最大約219万円の差が生じる試算もあり(ノムコム、2026年3月19日)、重説時に性能証明の取得状況を正確に説明することの財務的意義が増している。IT重説の現行4要件と高額取引での運用
国土交通省が令和6年12月に改訂したIT重説マニュアルに基づき、現在のIT重説は売買・賃貸ともに全面解禁されている。「賃貸のみ」「試験運用中」という情報は旧来のものであり、2026年4月時点では適用されない。
IT重説を実施するための4要件は次のとおりだ。
高額取引においてIT重説を活用する場面は増えている。海外在住の買主、多忙な経営者、複数拠点を持つ投資家など、対面の日程調整が困難なクライアントにとって利便性は高い。4要件を満たさない状態で実施した場合は宅建業法違反となるため、実施前のチェックリスト確認は欠かせない。
35条書面・37条書面の電子化については2022年5月18日施行の改正ですでに解禁されている。条件は①相手方が出力(印刷)できること、②電子署名等による改変検知措置があること、③相手方の承諾取得の3点だ。
不動産業界の三大タブーと重要事項説明の関係
不動産業界の三大タブーとして実務上広く認識されているのは、心理的瑕疵(事故物件)の不告知、境界・越境問題の隠蔽、土壌汚染の不開示の三点だ。いずれも重要事項説明書への記載義務と直結する。
心理的瑕疵については、国土交通省が2021年10月に告示した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が現在も有効であり、原則として過去3年以内の事案を告知する運用が定着している。高額物件では旧来の邸宅が建て替えられたケースも多く、土地の履歴調査が重説前の必須業務となる。
境界・越境問題は、松濤・番町・元麻布などの旧来の高額住宅地で特に頻出する。隣地との境界確定が未了のまま売買が進むと、引渡し後に紛争が生じるリスクが高い。重説書面への記載と並行して、測量図・境界確認書の原本確認まで行うことが実務上の標準だ。
土壌汚染については、旧工業用地や旧ガソリンスタンド跡地では調査結果の有無にかかわらず重説書面への記載が求められる。これら三点を軽視した重説は、宅建業法違反にとどまらず民事上の損害賠償リスクを生む。高額取引においてこの三点を適切に処理できるかどうかは、宅建士の実務水準を測る最も基本的な指標の一つだ。
宅建とFP1級の難易度比較
宅建試験とFP1級の難易度は、試験の性質が異なるため単純比較は難しいが、合格率と学習時間の観点から整理できる。
宅建試験(宅地建物取引士資格試験)の2025年度合格率は15.6%(試験センター発表)。必要学習時間の目安は300〜400時間とされる。出題範囲は宅建業法・権利関係・法令上の制限・税その他に限定されており、試験範囲の輪郭が明確だ。
FP1級(学科)の合格率は例年10%前後で推移しており、2025年9月実施分は11.2%(金融財政事情研究会発表)。必要学習時間は500〜800時間とされ、金融・保険・税務・不動産・相続・ライフプランニングと出題範囲が広い。さらに実技試験(面接形式)が別途あり、学科合格後に実技対策が必要となる点で総合的な負荷は高い。
不動産取引の実務という観点では、宅建は法的な独占業務(重要事項説明・35条書面への記名)に直結する資格であり、FP1級は税務・相続・資産運用の横断的な知識を証明する資格だ。高額不動産取引を専門とする宅建士がFP1級を併有することで、重説時に税制・相続の文脈を含めた説明が可能になる。難易度の序列よりも、両資格の機能的な補完関係を理解することが実務上は重要だ。
貸付用不動産の財産評価見直しと重説への間接影響
令和8年度(2026年度)税制改正大綱は、重要事項説明書の記載内容そのものを変えるわけではないが、高額不動産取引の動機と物件選定に実質的な影響を与える。
最大の変更点は貸付用不動産の財産評価見直しだ。課税時期前5年以内に取得した貸付用不動産について、路線価等による評価から時価評価に変更される。不動産小口化商品(不動産特定共同事業契約・信託受益権に係る金融商品取引契約)は取得時期にかかわらず時価評価となる。この改正は2027年1月1日以降の相続等から適用予定だ(大和総研、2026年3月27日)。
相続対策として貸付用不動産を直前取得する手法の節税効果が大幅に縮小するため、資産構成の見直しを迫られる富裕層は少なくない。物件の評価方法、取得時期、用途区分が相続税評価に直結するため、重説時に宅建士が物件の現況と登記上の用途を正確に説明することが、買主の税務戦略と整合する取引設計の前提となる。取引前に税理士との連携を前提とした重説設計を行うかどうかは、仲介会社の実務水準を測る指標の一つだ。
高額取引で問われる宅建士の業務水準
宅建業法が定める重説の義務は最低基準であり、3億円以上の取引で買主が求める説明の深度はその水準を大きく超える。
登記と実態の乖離確認:旧来の高額邸宅では登記面積と実測面積が異なるケースが存在する。重説書面上の記載と現地実測の整合性を確認し、差異がある場合はその処理方法を契約条件に反映させる必要がある。 私道・位置指定道路の権利関係:元麻布・西麻布・松濤・番町などの高額住宅地では、私道持分の有無と通行・掘削承諾の取得状況が物件価値に直結する。重説書面への記載だけでなく、承諾書の原本確認まで行うことが実務上の標準だ。 土壌汚染調査:都市計画法上の用途地域が工業系から住居系に変更された経緯を持つ土地や、旧来のガソリンスタンド跡地などでは土壌汚染リスクが残る。重説書面に調査結果の記載がない場合、買主が自ら調査を依頼するコストと時間を見込む必要がある。 区分所有建物の管理状況:管理費・修繕積立金の滞納状況、長期修繕計画の内容、大規模修繕の実施予定は35条書面の記載事項だ。港区・渋谷区の高額マンションでは修繕積立金の月額が10万円を超える物件も珍しくなく、買主の実質的なランニングコストを正確に把握するうえで欠かせない情報となる。宅建士の業務は重説書面の読み上げではない。物件固有のリスクを調査し、買主の取引目的に照らして優先度を整理し、条件交渉の根拠として活用できる形で説明することが本来の役割だ。
多くの仲介会社では、内見・条件交渉・デューデリジェンスの段階を無資格の営業担当が担い、署名直前にのみ宅建士が登場する体制をとる。Koukyuu はこの体制を採用しない。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して買主に同席する。
Koukyuu は表参道・青山・元麻布をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談は随時承っています。
