
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
松濤の公示地価、2026年に坪750万円を突破
国土交通省が2026年3月に公表した地価公示によれば、渋谷区松濤の住宅地平均は227万円/㎡、坪単価に換算すると750万4,132円となった。前年比の上昇率は+11.18%。2025年の+11.62%に続き、2年連続で二桁上昇を記録したことになる。
最高地点は松濤1丁目13番7号で264万円/㎡、坪単価872万7,272円。前年比では+13.79%の上昇だった。渋谷区全体の平均地価が187万4,100円/㎡であることを踏まえると、松濤の水準は区平均を約21%上回る。東京23区の住宅地平均85万6,400円/㎡との差はさらに大きく、松濤が都内純住宅地の最上位クラスに位置することを改めて示している。
ただし渋谷区内のランキングでは、2025年の13位から2026年は15位へとわずかに後退した。神山町(前年比+19.57%)や円山町(+16.67%)など、商業地に隣接するエリアの上昇率が松濤を上回ったことが背景にある。都内住宅地全体が底上げされるなかで、松濤は絶対水準の高さを維持しながら、周辺の商業地隣接エリアに上昇率で追い上げられている局面だ。
用途地域と低層規制が生む「希少性の構造」
松濤の地価水準を支える根本的な要因は、土地の物理的な希少性にある。同地区は第一種低層住居専用地域に指定されており、建蔽率60%、容積率150%という厳格な制限が課されている。準防火地域の指定も重なり、大規模な開発や高層建築は構造的に不可能だ。
渋谷駅から徒歩圏内に位置しながら、この低層規制が半世紀以上にわたって維持されてきた。最寄り駅は京王井の頭線の神泉駅で、渋谷駅まで徒歩でも10分程度の距離にある。アクセスの利便性と低層住宅地の静謐さが共存するエリアは、23区内でも限られる。
国土交通省の鑑定コメントには「大規模住宅・マンション等が多い閑静な住宅地域」と記されている。東京都知事公館、観世能楽堂、渋谷区立松濤美術館、戸栗美術館が集積するこの街区は、行政と文化施設の存在が住環境の質を底支えしている。渋谷区立松濤美術館では2026年7月4日から9月6日にかけて「没後50年 髙島野十郎展」が開催予定で、地域の文化的な密度は引き続き高い。
容積率150%という上限は、同じく高級住宅地として知られる南青山や番町の一部と比較しても低い水準だ。建てられるものの制限が厳しいほど、既存の良質な住宅の希少価値は高まる。松濤の地価が渋谷区平均を大きく上回り続ける背景には、この規制構造がある。
歴史的水準から見た現在地
松濤の公示地価は1988年に685万円/㎡のピークを記録した。坪単価に換算すると2,264万円という水準だ。その後の下落は急峻で、底値となった2004年には110万円/㎡まで落ち込んだ。ピーク比で約84%の下落である。
2026年現在の227万円/㎡は、バブル期ピークの約33%の水準にとどまる。この数字は二つの意味を持つ。ひとつは、現在の水準がバブル期の再現ではないという事実。もうひとつは、2004年の底値から2026年までの22年間で地価が約2.06倍に回復したという事実だ。
直近5年の推移を見ると、上昇の加速は明確だ。2021年の161万5,000円/㎡から2026年の227万円/㎡へ、5年間で約40.6%の上昇を記録している。2023年以降は年率7〜11%台の上昇が続いており、単純な回復局面を超えた需要の積み上がりが見て取れる。
東京カンテイが2026年3月24日に公表したデータによれば、東京23区の中古マンション70㎡換算価格は2026年2月時点で1億2,349万円、前月比+1.9%で22ヵ月連続の上昇を記録した。東京都全体では前年同月比+37.3%という数字も出ている。松濤の地価上昇は、こうした都心部全体の需給動向と連動している。
松濤で取得できる不動産の実態
松濤で流通する不動産の多くは、戸建住宅か低層マンションだ。容積率150%の制限下では中高層の分譲タワーは成立しない。市場に出る案件は絶対数が少なく、売却の意思決定から成約まで時間を要するケースが多い。
坪単価750万円超という地価水準を前提にすると、100坪(約330㎡)の敷地であれば土地だけで2億5,000万円前後の評価となる。建物を含めた一戸建て住宅の取引価格は、立地・築年・建物仕様によって幅があるが、3億円台後半から10億円を超える案件まで分布する。低層マンションの場合、専有面積100㎡超の住戸で4億円から6億円台が現実的なレンジだ。
渋谷区内の隣接エリアでは、ブランズ渋谷常盤松 4億6,000万円(3LDK)のような案件が市場に出ている。松濤と同じく渋谷区の閑静な住宅地に位置し、低層規制下の良質な住環境を求める層と需要が重なる。また港区方面では、広尾ガーデンフォレスト A棟 3億円(3LDK)のような大規模邸宅型の案件も選択肢に入る。
Koukyuu は松濤を含む渋谷区・港区の高額物件について、公開前の情報を含めた私的な相談に対応している。一般の物件リストには掲載されない案件の多くは、こうした非公開の流通経路を通じて動く。
相続・資産保全の観点から松濤を評価する
松濤の不動産を資産として保有する場合、相続税評価の観点は欠かせない。路線価は公示地価の約80%水準で設定されるのが通例であり、松濤の場合、相続税評価額は時価の80〜85%程度となるケースが多い。時価と評価額の乖離が大きいほど、不動産保有による相続税圧縮効果は高くなる。
第一種低層住居専用地域という用途指定は、将来にわたって周辺の住環境が大きく変化しにくいことを意味する。隣地に突然高層ビルが建つリスクは構造的に低い。長期保有を前提とした資産として、この安定性は評価に値する。
一方で、容積率150%の制限は建替え時の収益性を制約する。相続後に賃貸収益を最大化したい場合、松濤の土地は必ずしも最適解とは言えない。資産保全と相続対策を主目的とするか、収益性を重視するかによって、松濤の評価は変わってくる。
固定資産税の観点では、住宅用地の特例(200㎡以下の小規模住宅用地は課税標準が1/6)が適用される範囲であれば、地価水準の割に税負担は抑えられる。ただし松濤の標準的な敷地規模を考えると、200㎡を超える部分については1/3の軽減にとどまる点に留意が必要だ。
渋谷区内で比較検討する際には、プラウドタワー渋谷 3億8,800万円(2LDK)のような渋谷駅直近の高層マンションも選択肢に挙がる。利便性と流動性を重視する投資目的と、長期保有・住環境の安定性を重視する実需・資産保全目的では、最適な物件タイプが異なる。
2026年の松濤市場、今後の読み方
2026年の公示地価で確認された+11.18%という上昇率は、2025年の+11.62%からわずかに鈍化した。渋谷区内の順位後退と合わせて見ると、松濤の上昇ペースが周辺の商業地隣接エリアに追いつかれつつある局面と解釈できる。
ただし、これは松濤の需要が後退しているという意味ではない。神山町(+19.57%)や円山町(+16.67%)の上昇は、それらエリアの相対的な割安感が修正されているプロセスだ。松濤はすでに高い絶対水準にあり、そこからさらに二桁上昇を続けること自体、需要の厚みを示している。
バブル期ピーク(685万円/㎡)との比較では、現在の227万円/㎡はまだ33%の水準だ。ピーク回帰シナリオを前提とする必要はないが、都心部への人口集中、外国人富裕層の国内不動産取得、円安局面での実物資産需要といった構造的な押し上げ要因は2026年時点でも継続している。
東京23区住宅地平均が+9.0%で上昇するなか、松濤は区平均を上回るペースで上昇を続けている。純住宅地としての規制の厳格さ、文化施設の集積、渋谷駅へのアクセス、そして歴史的なブランド力。これらの要素が複合的に作用し、松濤の需給構造を支えている。
Koukyuu は表参道・南青山・白金台をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)はこちらから。
