成年後見人による不動産売却:2026年法改正と手続きの実務
成年後見人による不動産売却:2026年法改正と手続きの実務
Koukyuu Realty
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Koukyuu 宅地建物取引士 記事監修アドバイザー

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港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。

2026年4月3日、成年後見制度を根本から変える改正案が閣議決定された。最大の変更点は「終身制の廃止」だ。これまで成年後見は一度開始すると原則終身にわたり続いたが、改正後は5年などの期間を定め、満了時に裁判所が更新や停止を判断する「期間限定型」が導入される。不動産売却を目的とした限定支援型も新設され、売却手続き完了時点で後見を終了できる柔軟性が生まれる。

この制度変更は、港区や渋谷区、千代田区などに所在する高額不動産の相続・資産整理に直結する。特に3億円を超える高級マンションや一戸建てを巡るケースでは、成年後見人による売却の是非が家族の資産戦略を左右する。

2026年法改正のポイント:終身制廃止と期間限定型の導入

法制審議会での検討を経て、2026年度を目標に以下の改正が進行中だ。

改正項目現行制度2026年改正後
期間原則終身5年など期間限定が原則
類型後見・保佐・補助の3類型「補助」へ一本化
柔軟性開始後の変更困難必要な期間・事務のみ依頼可能
本人意思財産保護優先生活の質・意思決定尊重へ転換

「限定支援型」の新設は特に注目に値する。不動産売却という特定目的のみを後見人に委任し、手続き完了と同時に後見関係を終了できる。これにより、介護施設入所に伴う自宅売却など、スポット的なニーズに対応できるようになる。

ただし、施行時期は2026年度「を目標」とした議論継続中であり、確定ではない。現時点で不動産売却を検討する場合、現行制度での対応が基本となる。

居住用・非居住用の違いと許可要件

成年後見人による不動産売却で最も重要な分岐点は、物件が「居住用」か「非居住用」かだ。

居住用不動産

被後見人が実際に居住している物件の売却には、家庭裁判所の許可が必須だ。無許可で売却した場合、売買契約は無効となる。審査期間は1〜2ヶ月を要し、以下の点が判断材料となる。

  • 売却の必要性(介護施設入所など)
  • 査定価格の妥当性
  • 被後見人の意思(可能な範囲で)
  • 売却代金の使途計画

2023年の実績では、家庭裁判所が許可した不動産売却申立件数は全国で約8,200件。高齢化に伴い認知症や判断能力低下による後見制度の活用が増加傾向にある。

非居住用不動産

賃貸中の物件や空き家など、被後見人が居住していない場合は、後見監督人の同意で原則可能だ。審査期間も数日〜1週間と短い。ただし、相場を著しく下回る売却価格の場合は、家庭裁判所の許可が必要になるケースもある。

成年後見人による不動産売却の具体的な手続き

居住用不動産の売却を想定し、手続きの流れを整理する。

STEP1:家庭裁判所への申立て

売却の必要性と査定価格の妥当性を示す資料を添え、許可申請を行う。必要書類には、診断書、物件登記簿謄本、複数社の査定書、売却代金の使途計画書などが含まれる。

STEP2:複数社による査定

相場より安い売却は許可が下りないリスクがある。港区の高級マンションであれば、3社以上の査定を比較し、妥当性を証明する必要がある。査定額に大きな開きがある場合、その理由の説明責任が生じる。

STEP3:媒介契約の締結

許可が下りた後、不動産会社と媒介契約を締結する。成年後見人が契約当事者となるが、被後見人の氏名・住所も記載する必要がある。

STEP4:売買契約と決済

買主との売買契約締結、決済、所有権移転登記を経て売却が完了する。成年後見人は、家庭裁判所への売却完了報告が義務付けられている

この過程で、後見人の資格や不動産市場の知識が試される。特に不動産の共有持分と相続が絡むケースでは、手続きがさらに複雑化する。

売却代金の管理と譲渡所得税の注意点

売却代金の管理

売却代金は本人のためにのみ使用可能だ。生活費、医療費、介護施設入居費用など、被後見人の福祉に直結する支出に限定される。成年後見人の私的利用は禁止され、違反した場合は後見人解任や損害賠償責任を負う。

売却代金の管理方法としては、後見人名義の別口座(後見口座)への預入が一般的だ。預金の払い出しには後見監督人の同意が必要な場合もある。

譲渡所得税

売却に利益が生じた場合、譲渡所得税が課税される。税率は所有期間により異なる。

所有期間税率備考
5年超20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)長期譲渡所得
5年以下39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)短期譲渡所得

確定申告の期限は売却翌年2月16日〜3月15日。成年後見人が申告義務を負う。

特に港区や渋谷区の高級物件では、購入時期によっては大幅な譲渡益が生じるケースもある。2013年頃に購入した物件であれば、2026年現在で2〜3倍の価格になっている事例も少なくない。税務計画は売却前から検討しておく必要がある。

家族信託との比較:どちらを選ぶべきか

成年後見制度の改正が進む中でも、家族信託の役割は維持される見込みだ。両者は根本的に異なる制度設計を持つ。

項目成年後見制度家族信託
開始時期判断能力低下後元気なうちに設計
裁判所関与あり(居住用不動産売却など)なし(信託契約に基づく)
不動産売却許可・報告義務あり信託契約で事前に定め可能
投資判断・修繕裁判所関与の可能性受託者が自主的に判断可能
柔軟性改正で向上見込み元来高い
コスト比較的低い設定時に一定のコスト

家族信託は、元気なうちに財産管理の仕組みを設計できる点で優位だ。特に複数の不動産を保有する場合や、将来の売却タイミングを柔軟にコントロールしたい場合に有効だ。

一方、成年後見制度は、事前に準備せず判断能力が低下した後でも利用できる手続きとして位置づけられる。2026年改正で期間限定型や限定支援型が導入されれば、より実用的な選択肢となる。

遺言書の書き方と併せて、生前の資産整理計画を検討することを推奨する。

高級不動産売却における査定価格の重要性

港区・渋谷区・千代田区の高級不動産では、査定価格の妥当性が許可の可否を左右する。

相場からの乖離リスク

家庭裁判所は、複数社の査定書を比較し、明らかに相場を下回る価格での売却には慎重な姿勢を示す。例えば、麻布台ヒルズや六本木ヒルズ周辺の新築マンションであれば、周辺事例との詳細な比較が求められる。

査定額に開きがある場合、以下の説明が必要になる。

  • 物件の物理的瑕疵(老朽化など)
  • 法的瑕疵(借地権、敷地の制限など)
  • 市場環境の急変
  • 買主の特定事情(隣接土地所有者など)

高級物件特有の複雑性

3億円を超える物件では、以下の要素が査定に影響する。

  • 眺望・日当たりの格差(同じ建物でも階層で価格が2倍開くケースも)
  • ペントハウスや特別仕様の有無
  • 駐車場やトランクルームの付属
  • 管理組合の財政状態

これらを適切に評価し、裁判所に説明できる資料を整備することが求められる。

成年後見人による不動産売却は、法律手続きと不動産市場の両方の専門性を要する。特に高額物件では、査定価格の妥当性証明が許可取得の鍵となる。2026年法改正で制度が柔軟化される見込みだが、現時点での売却検討においては、現行制度での丁寧な対応が不可欠だ。

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