海外赴任で自宅を賃貸に出す際、住宅ローン控除が失われる年数と回復の条件
海外赴任で自宅を賃貸に出す際、住宅ローン控除が失われる年数と回復の条件
Koukyuu Realty
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港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。

2026年5月、東京の都心3区における新築マンションの平均価格は坪単価1,200万円を超え、住宅ローン残高1億円以上を抱える世帯が増加している。外資系企業の幹部や医師、経営者層にとって、3〜5年の海外赴任はキャリア形成の常套手段だが、この期間中の自宅の扱い、特に住宅ローン控除の維持と賃貸併用の可否は、年間数十万円の税負担差を生む。

単身赴任と家族帯同で分かれる控除の適用

住宅借入金等特別控除、通称住宅ローン控除を海外赴任中も継続するための条件は、2016年4月1日以降に住宅を取得していることが前提となる。この日以降取得の住宅について、国税庁は「転勤・転地療養等のやむを得ない事情」がある場合の特例を設けている。

単身赴任の場合、生計を一にする配偶者または扶養親族が対象住宅に実際に居住し続けていれば、控除の適用が継続される。例えば、夫がシンガポールの支店長として赴任し、妻と子どもが港区の自宅に留まるケースだ。この場合、年間最大40万円の所得税控除、最大13万6,500円の住民税控除が維持される。

一方、家族全員で海外に帯同する場合、出国した年の住宅ローン控除は受けられない。2026年1月に家族全員で渡航した場合、2026年分の確定申告で控除は適用外となる。控除期間は原則13年間(2026年時点の制度)であり、この1年の喪失は期間の延長で補填されない。

賃貸併用の法的制限と金融機関の承認

住宅ローン返済中の物件を賃貸に出すことは、融資契約上原則禁止されている。多くの金融機関の約款には「居住用として利用すること」が明記され、賃貸収入を得る行為は契約違反に該当する。

ただし、転勤等のやむを得ない事情がある場合、金融機関は例外的に一時的な賃貸を承認することがある。この承認を得るためには、出国前に必ず融資担当者へ届出を行い、書面による承諾を取得する必要がある。承認の有無は金融機関の裁量に委ねられており、地方銀行やネット銀行、都市銀行で対応に差がある。

承認を得た場合でも、賃貸は「一時的」なものに限られる。永続的な賃貸経営への転換を意図する場合は、住宅ローンから事業用ローンへの借り換えが必要となる。住宅ローン 法人契約の実務:2026年税制改正後の個人名義との比較と戦略では、個人名義と法人名義の資金調達の比較を詳述している。

賃貸併用時の床面積要件と按分計算

家族帯同で海外赴任し、自宅を賃貸に出す場合、帰国後の住宅ローン控除再開に際して、床面積要件とローン残高の按分が重要となる。

賃貸併用住宅で住宅ローン控除を受けるには、自宅部分が建物全体の1/2以上かつ50㎡以上である必要がある。例えば、100㎡のマンションを賃貸に出す場合、帰国後に自宅として使用する部分が50㎡を超えていなければ、控除対象外となる。

ローン残高の按分も同様だ。自宅部分60%、賃貸部分40%の場合、ローン残高の60%のみが控除対象となる。ローン残高が8,000万円であれば、控除対象残高は4,800万円に縮小され、年間控除額も比例して減少する。

帰国後の再入居から控除が再開されるが、再入居の翌年からの適用となる点に注意が必要。2027年3月に帰国し、即日入居した場合、2027年分の確定申告では控除を受けられず、2028年分からの適用となる。この1年のラグは、制度上の「喪失」として扱われ、控除期間の延長は認められない。

非居住者となった場合の確定申告と納税管理人

1年以上の海外赴任で非居住者となった場合、国内源泉所得について確定申告が必要となる。不動産賃貸収入は典型的な国内源泉所得であり、海外に居住していても日本での課税対象となる。

非居住者が確定申告を行う場合、納税管理人の選任が原則必須となる。納税管理人は、納税地に住所または居所を有する個人または法人で、税務署への申告書提出や納税手続きを代理する。配偶者や親族、税理士が選任されることが多い。

納税管理人を選任しない場合、税務署は職権で納税管理人を定めることがある。これは望ましくない事態であり、出国前に信頼できる納税管理人を確定させておくべきだ。

住宅ローン控除については、非居住者であっても、転勤等のやむを得ない事情があれば適用可能となる。ただし、生計を一にする家族が国内に居住し、対象住宅を使用していることが条件となる。家族帯同で非居住者となった場合、控除は停止される。

出国前後の手続きと必要書類

海外赴任に際して、住宅ローン控除の継続または停止、賃貸併用の有無に応じて、以下の手続きが必要となる。

出国前には、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を所轄税務署へ提出する。この届出により、税務署は納税地の異動や、住宅ローン控除の適用状況を把握する。

賃貸に出す場合は、金融機関への事前届出と承認取得が必須だ。承認を得るためには、赴任先や期間、賃貸管理会社の情報などを提出する必要がある。承認プロセスには2〜4週間を要するケースもあり、出国予定の2ヶ月前には手続きを開始すべきだ。

帰国後の控除再開には、確定申告書に加えて、「住宅借入金等特別控除の計算に関する明細書」「年末残高等証明書」、および住民票の写しが必要となる。これらの書類は、再入居の翌年の確定申告時に提出する。

セカンドハウスローン金利 2026年最新動向と富裕層の資金計画では、複数の住宅を保有する場合の資金計画について言及している。海外赴任中の自宅と、赴任先の住居を両方ローンで賄う場合の金利動向も参考になる。

賃貸併用の収支シミュレーションとリスク管理

海外赴任中の賃貸併用は、単なる税務上の問題ではなく、キャッシュフローの問題でもある。月々の住宅ローン返済額と賃料収入のバランス、管理費や固定資産税、空室リスクを総合的に検討する必要がある。

例えば、月々のローン返済額が15万円、管理費と積立金が3万円、固定資産税が月額換算で2万円の場合、保有コストは月20万円となる。賃料収入が25万円であれば、5万円の黒字が生じるが、管理会社への委託手数料(賃料の5%程度)や、空室時のリスクを考慮する必要がある。

定期借家契約の活用も検討すべきだ。定期借家契約は、契約期間の満了で終了する賃貸借契約であり、帰国時の明け渡し請求が容易となる。ただし、賃料は普通借家契約よりも10〜15%低く設定されることが多い。

不動産リファイナンス戦略2026:金利上昇局面での資産保全とキャッシュフロー最適化では、金利上昇局面でのローンの見直し方について解説している。海外赴任中に金利が変動した場合の対応も含め、資産保全の視点が重要だ。

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