
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2026年5月現在、住宅ローン控除を受けながらふるさと納税を継続する世帯が増えている。両制度の併用は可能だが、単純に「得をする」構造ではない。特に年収1,000万円以上の富裕層や、港区・渋谷区・千代田区などの高額物件を購入した層にとって、住民税の控除上限が実質的な制約となるケースが少なくない。
2026年の制度設計と控除の優先順位
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、2022年以降に入居した場合、年末残高の0.7%が年間最大21万円(長期優良住宅等は最大35万円)、控除期間は13年間となる。一方、ふるさと納税は自己負担2,000円を除く寄附金全額が所得税・住民税から控除される。
両制度を併用する際、税務上の控除順序は明確に定められている。ふるさと納税の控除が先に適用され、次に住宅ローン控除が適用される。この順序は、結果として住宅ローン控除の一部が「余る」リスクを生む。両制度の控除合計が納税額を上回る場合、住宅ローン控除の控除しきれない部分が発生する。
所得税と住民税の両方から控除される住宅ローン控除に対し、ふるさと納税は原則として所得税から優先して控除される。この構造が、併用時の計算複雑さの根源にある。
ワンストップ特例と確定申告の使い分け
住宅ローン控除の適用年数によって、ふるさと納税の申請方法が変わる。これは併用時の税負担に直接的な影響を与える。
住宅ローン控除1年目は、確定申告が必須となる。このため、ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用できない。確定申告でふるさと納税の寄附金控除を受けると、所得税の課税所得が圧縮される。結果として、所得税から控除される住宅ローン控除の額が減少する可能性がある。
住宅ローン控除2年目以降で、給与所得者がワンストップ特例制度を利用する場合、ふるさと納税の控除は住民税のみから行われる。所得税への影響がないため、住宅ローン控除の減額リスクが低減される。ただし、ワンストップ特例の利用条件は厳格だ。年間の寄附先が5自治体以内であること、確定申告が不要な給与所得者であることが求められる。
2026年5月時点で、住宅ローン控除1年目の世帯がふるさと納税を継続する場合、確定申告による「所得税圧縮効果」を踏まえたシミュレーションが不可欠となる。
住民税控除上限が富裕層を縛る構造
住宅ローン控除のうち、住民税から控除される部分には上限が設けられている。課税総所得金額の7%を上限とし、最大136,500円である。この上限は、高額所得者ほど意識しなければならない。
年収1,500万円以上の世帯で、住宅ローン残高が5,000万円を超えるケースを想定する。年末残高の0.7%は35万円に達するが、所得税からの控除額が限界に近づくと、住民税からの控除に依存する部分が増える。住民税控除上限の136,500円に抵触すると、住宅ローン控除の一部が実質的に失われる。
この状況でふるさと納税を追加すると、住民税の控除枠をさらに圧迫する。ふるさと納税の控除上限は、給与所得者の場合「住民税所得割額×20%+2,000円」が目安となる。年収800万円の世帯では約12万円、年収1,500万円の世帯では約30万円前後となる。
住民税からの控除枠は有限である。住宅ローン控除の住民税分とふるさと納税の両方を控除しようとすると、どちらかが「溢れる」リスクが生じる。
年収800万円のシミュレーションと実際の税負担
具体的な数値で検証する。年収800万円、配偶者控除あり、子16〜18歳あり、住宅ローン控除40万円のケースである。
ワンストップ特例を利用した場合、所得税は約36万円となる。住宅ローン控除40万円を所得税から控除しようとしても、所得税額を上回るため、4万円が住民税から控除される。ふるさと納税の上限約12万円も住民税から控除される。
この場合、住民税からの控除合計は16万円となる。住民税控除上限136,500円を超過し、住宅ローン控除の一部が実質的に失われる可能性がある。
確定申告でふるさと納税を処理した場合、所得税がさらに圧縮され、住宅ローン控除の所得税からの控除額が減少する。結果として、住民税からの控除依存度が高まり、上限抵触のリスクが増大する。
このシミュレーションは、年収800万円という中堅サラリーマン層のケースである。年収が上がるほど、所得税の圧縮効果と住民税の上限制約が複雑に絡み合う。
長期優良住宅と控除期間の戦略的選択
2022年以降に入居した長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH等は、住宅ローン控除の年間上限が35万円に引き上げられる。控除期間も13年間と長期化する。この拡大は、併用時の税務戦略に影響を与える。
控除期間が13年間に延長されることで、長期的な税負担の平準化が可能となる。一方、年間上限の引き上げは、所得税・住民税の控除バランスを変化させる。高額所得者ほど、所得税からの控除額が増え、住民税への依存度が相対的に低下する。
ただし、長期優良住宅の認定を受けるための建築基準は厳格である。省エネ基準の適合、耐震等級の確保、バリアフリー対応など、追加コストが発生するケースが多い。税務上のメリットと建築コストのトレードオフを、物件選定の初期段階から検討する必要がある。
2026年5月時点で、2025年12月31日までに入居した物件は現行制度が適用される。2026年以降の新規入居に対する制度については、2025年9月時点で未発表である。既に適用中の控除は継続されるが、新規購入を検討する層は制度動向を注視すべきだ。
法人スキームとの組み合わせと個人名義の比較
高額物件を購入する富裕層の中には、法人名義での住宅取得を検討する者もいる。法人スキームでは、住宅ローン控除の適用外となるが、別の税務メリットが生じる。
個人名義で住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合、前述の住民税上限問題が本質的な制約となる。年収2,000万円以上で住宅ローン残高1億円を超えるケースでは、住宅ローン控除の年間上限21万円(一般住宅)または35万円(長期優良住宅等)が、所得税・住民税の控除構造の中でどう位置づけられるかが重要となる。
住宅ローン 法人契約の実務:2026年税制改正後の個人名義との比較と戦略では、法人名義と個人名義の税務比較を詳述している。個人名義を選択する場合、住宅ローン控除とふるさと納税の併用戦略は、単なる節税技法ではなく、長期のキャッシュフロー設計の一部となる。また、つなぎ融資の仕組みと注文住宅購入の資金計画。2026年の金利・税制・リスクを整理するでは、建築中の資金繰りと税務タイミングの調整方法も解説している。住宅ローン控除の適用開始時期は、入居時期に依存する。建築期間中の資金計画と、税務上の最適入居タイミングを整合させることが、併用時のメリット最大化に寄与する。
Koukyuu は、麻布・広尾・白金などの高額物件購入において、個人名義と法人名義の選択、住宅ローン控除の活用可否、ふるさと納税との併用戦略を含めた総合的な資金計画を支援している。
Koukyuu は麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)より。
