
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2026年3月、LIFULL HOME’Sの査定システムがアネックス麻布十番の32.09㎡タイプを4,698万円、42.93㎡タイプを8,342万円と提示した。平米単価に換算すると146万円から194万円の帯となり、港区東麻布の築11年・40㎡平均(176万円/㎡)と比較して17%低い水準に位置する。この乖離が示すのは、物件個別の特性か、それとも低層マンション全体の価格形成の変化か。
物件の物理的条件と立地
アネックス麻布十番は2016年1月に竣工した地上7階・地下1階の鉄筋コンクリート造。総戸数は非公表だが、7階建という低層性と麻布十番駅徒歩4分、麻布十番商店街徒歩3分(約240m)という立地の組み合わせが特徴的である。三井不動産レジデンシャルサービスが管理を担う。
同エリアには2015年から2016年にかけて複数の低層高級マンションが竣工した。LAFONTE麻布十番(2016年・坪単価約320万円)、パークアビタシオン麻布十番(2015年)などが競合物件として挙げられる。アネックス麻布十番の坪単価146万円/㎡(約456万円/坪)は、これら同年代物件と比較してもやや抑え目の水準にある。
2026年公示地価と資産価値の乖離
国土交通省の2026年(令和8年1月1日時点)公示地価は、麻布十番エリアの商業地・住宅用地が大幅上昇していることを示している。麻布十番3-7-11(商業地)は坪単価1,319万円で前年比17.4%上昇。麻布十番2-20-7(商業地)は坪単価1,726万円で前年比18.9%上昇した。いずれも2021年と比較すると50%前後の上昇率であり、1990年のバブル期水準を大きく上回っている。
この地価高騰とアネックス麻布十番の中古価格との間には明確な乖離が存在する。公示地価が3年連続で二桁上昇する中、築10年を経過した低層マンションの資産価値は、地価上昇を追従していない。これはタワーマンション型の資産性と低層マンション型の資産性が異なる価格形成メカニズムを持つことを示唆している。
港区中古マンション(築10年・70㎡)の平均価格は、直近3年間で23.99%上昇している。東京都平均(16.98%)を大きく上回るこの高騰率は、港区全体の強さを示すが、個別物件の選択が収益性を大きく左右する環境でもある。
賃貸市場での実績と利回り
2026年1月から3月の掲載実績によると、アネックス麻布十番の32.13㎡・1Kタイプの賃料は17万円/月。坪単価換算で約5.3万円/月/坪となる。過去最高は2021年10月の20万円/月であり、現在はその85%水準にある。
この賃料実績から算出される想定利回りは約4.3%から4.5%の範囲(17万円×12ヶ月÷4,698万円)。東京都心部の高級マンション投資としては標準的な水準だが、資産価値の減価リスクを考慮すると、純利回りはさらに圧縮される。
LIFULL HOME’Sの試算では、アネックス麻布十番は築15年で現価格の97.1%、築20年で93.5%という緩やかな減価傾向を想定している。ただし、これはあくまで統計モデルに基づく予測であり、実際の再販価格は個別の修繕状況、周辺の新築供給、景気変動に大きく左右される。
低層マンションの資産性評価
築10年を経過した時点での資産性評価には、複数の観点が必要である。まず、建物の物理的劣化よりも、設備・内装の陳腐化が賃料力を左右する。2016年竣工物件は、給湯器、エアコン、キッチン機器の更新サイクルに入る時期でもある。
次に、低層マンションの価格形成は、タワーマンションと異なる流動性リスクを持つ。総戸数が少ないため、売却時の買い手発見に時間を要するケースが多い。一方で、タワーマンションに比べて管理費・修繕積立金が低く、維持コストの安定性はある。
麻布十番駅はLIFULL HOME’S「買って住みたい街ランキング2025」で首都圏1471駅中19位にランクインした。実際の検索・問い合せ数から算出されたこの順位は、エリアニーズの高さを示す。ただし、駅の人気と個別物件の資産価値は必ずしも一致しない。
投資判断のための検証項目
アネックス麻布十番のような物件を検討する際、確認すべき具体的項目を挙げる。過去5年間の管理組合議事録における大規模修繕の議論有無、修繕積立金の残高と年間積立額の妥当性、近隣の新築供給計画(特に2026年以降の都市計画)、駅周辺の商業施設の空室率と賃料推移である。
また、同エリアのエスティメゾン四谷坂町 502のような物件と比較検討する際は、駅距離による利便性の差、築年数による設備グレードの差、そして将来の再開発可能性の差を数値化して評価する必要がある。
港区東麻布の公示地価上昇が中古マンション価格に転嫁されるかどうかは、今後の供給量と金利動向に依存する。2026年時点で、地価と建物価格の乖離は拡大傾向にある。この乖離が縮小するシナリオと、継続するシナリオの両方を想定したシミュレーションが求められる。
Koukyuu は、麻布・広尾・白金・港区・渋谷区・千代田区などの格式ある住宅地において、3億円以上の取引を専門とするプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から契約・引渡しに至るまで、有資格の宅建士が一貫して同席し、デューデリジェンスから条件交渉までを担当します。個別のご相談はこちら)よりお願いいたします。
