
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
港区麻布十番3丁目の路地に、明治42年創業の店舗が2024年10月に隣ビルへ移転した。炭火焼鳥の「ももたろう 麻布十番」は、麻布十番駅1番出口から徒歩2分の地点で、年中無休・朝6時まで営業を続ける。同店の営業時間は17時から翌6時まで。最終入店は5時である。
この営業形態は、東京23区の高級住宅地において特異だ。麻布十番エリアの2026年公示地価は355万円/m²、前年比16.75%上昇を記録している。坪単価に換算すると1,174万円に達する。ここに住む層の時間的余裕が、深夜の商業を支えている。
創業115年、麻布十番の時間軸
「ももたろう」の創業は1909年(明治42年)。麻布十番の町並みが形成された初期から存在する。2024年10月の移転先は麻布HAUS 1階。床面積は旧店舗より拡大し、個室とカウンターを配置した。
営業時間の設定は、周辺の住居実態を反映している。麻布十番駅周辺の高級賃貸物件は、シングル向けで東京23区最大の割合(5.6%)を占める(LIFULL HOME’S調査、2025年1-6月)。最高賃料は月112万円。対象層は外資系幹部、医師、経営者で、定型的な勤務時間を持たない層が多い。
この人口構造は、23時以降の需要を生む。居酒屋の平均営業時間は23時までが主流だ。麻布十番で朝6時まで開ける店は限られる。
価格帯とメニュー構成
「ももたろう 麻布十番」の平均予算は3,000円から4,000円(宴会時)。焼鳥1本の価格は250円から350円程度。コース料理は4,000円台から用意される。
この価格設定は、エリアの賃料水準と対比すると特徴的だ。麻布十番の1K賃料中央値は2026年4月時点で11.5万円。築浅物件は13万円を超える。同じ港区でも、隣接する六本木の12.5万円、白金高輪の11.0万円と比較すると、ここは高級住宅地の中間に位置づく。
パークコート麻布十番ザ・タワーやザ・ハウス南麻布に居住する層にとって、4,000円台の飲食は日常の範疇にある。「リーズナブル」という評価は、相対的な位置づけを示す。メニューは鶏肉の部位別に細分化される。もも、むね、皮、手羽先、軟骨、レバー、ハツ、せせりなど20種類以上。炭火焼きによる外側の焦げ目と内側の肉汁のバランスが、老舗の技術として継承されている。
個室とプライバシー
店舗は個室を複数設ける。2名から4名用の完全個室、6名から10名用の半個室が配置される。カウンター席は8席程度。総席数は30席を超える。
この座席構成は、麻布十番の居住者ニーズに対応する。外資系幹部や開業医の接待、プライベートな会食が多いエリアでは、個室の有無が店舗選択の決め手になる。コロナ禍以降、この傾向は強化された。
「ももたろう」の予約は電話とネットで受け付ける。当日予約も可能だが、週末の個室は3日前までの確保が推奨される。深夜帯の需要は予測しにくく、店側の在庫管理は年間を通じて課題となる。
年中無休の経済性
年中無休の運営は、人件費と在庫ロスのトレードオフである。鶏肉の仕入れは毎日行われる。朝6時閉店後、午後の開店に向けた下処理が入る。実質的な休日は存在しない。
この体制が維持できる背景には、エリアの集客力がある。麻布十番駅の1日平均乗降人員は約6万人。これは隣接する六本木駅の約15万人、広尾駅の約3万人と比較すると中間の規模だ。ただし、駅周辺の商業密度は六本木より低く、個別店舗の顧客単価は高い。
2026年4月に販売が開始された「シエリアタワー南麻布」は、麻布十番駅徒歩圏に位置する。価格は3.19億円(80.67m²・2LDK)。対象層は年収4,000万円から5,000万円のトップエグゼクティブ。維持費を含む月間住居費は106万円と試算される。この層の外食頻度と単価は、一般世帯の数倍に達する。
麻布台ヒルズと周辺商業の変容
2023年11月開業の麻布台ヒルズは、エリアの商業構造を変えた。地下鉄日比谷線の新駅「麻布台ヒルズ駅」が設置され、麻布十番駅との距離は約800m。歩行者動線は変化した。
麻布台ヒルズの商業エリアは約150店舗。高級レストランからカジュアルダイニングまで網羅する。ここへの来客は、従来の麻布十番の飲食店とは重複しない層も含む。ただし、深夜の需要は麻布十番側に留まる。麻布台ヒルズの飲食店の多くは23時までの営業だ。
パークコート麻布十番 三田ガーデン棟など、駅近郊の高級物件に居住する層にとって、朝6時まで開く居酒屋はインフラの一部となる。移動時間を最小化し、プライバシーを確保できる選択肢は限られる。相続税評価額と実勢価格の乖離
麻布十番エリアの不動産には、相続税評価額と実勢価格の大きな乖離が存在する。元麻布の2026年公示地価は322.5万円/m²、坪単価1,066万円だ。これは路線価に近い評価基準で算出される。
しかし、実際の取引価格はこれを上回る。タワーマンションの場合、建物の付加価値が加算される。パークコート麻布十番ザ・タワーの過去の成約事例では、坪単価2,000万円を超えるケースがある。
この乖離は、相続税対策上のメリットを生む。評価額で保有し、実勢価格で賃貸または売却する。居住用の場合は小規模宅地等の特例が適用され、さらに評価額を圧縮できる。
「ももたろう」のような商業施設の存在は、エリアの「居住価値」を支える要素の一つだ。深夜の食事選択肢は、資産価値の構成要素として評価されることもある。特に単身者やデュアルインカム世帯にとって、自炊の代替手段は重要な住環境指標となる。
Koukyuu は麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)はこちらより。
