
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
令和8年度税制改正大綱は2025年12月26日に公表された。個人事業承継計画の提出期限が2026年3月31日から2028年9月末まで2年6か月延長されたほか、農地等の納税猶予における利子税全額免除措置の適用期限も5年延長された。これらの改正は、事業用資産の円滑な承継を後押しする狙いがある。
一方で、令和9年1月1日以降の相続・贈与から適用される貸付用不動産の評価方法変更は、東京の富裕層にとって構造的な影響をもたらす。被相続人等が相続開始前5年以内に対価を伴う取引で取得または新築した貸付用不動産について、従来の路線価方式ではなく取得価額の80%で評価される。これは実勢価格に近い水準であり、節税効果の大幅な縮小を意味する。
納税猶予制度の三類型と2026年時点の適用要件
不動産相続税の納税猶予制度は、対象資産の性質により三つに分類される。それぞれ要件と期限が異なり、混同は禁物だ。
第一に農地等に係る納税猶予制度がある。農地、採草放牧地、山林を相続・遺贈で取得し、農業を継続する場合に適用される。令和8年度税制改正により、収用交換等による譲渡時の利子税全額免除措置の適用期限が5年延長された。これは農地の流動化を促進しつつ、相続人の税負担を軽減する配慮である。
第二に個人の事業用資産に係る納税猶予制度がある。個人事業主が事業用の土地、建物、機械等を後継者に贈与または相続させる場合に適用される。猶予税率は贈与取得で100%、相続取得で80%である。承継後も事業の継続が条件で、承継計画の提出と承認が必要となる。
第三に相続税の一般納税猶予制度がある。これは上場株式等を対象とし、相続税額の80%が猶予される。ただし、不動産を直接対象とするものではない。
相続税取得費加算の特例が、港区・渋谷区の高額不動産で機能する条件については、別途検討が必要だ。取得費加算と納税猶予は併用できないケースもあり、数値シミュレーションが前提となる。個人事業承継計画の期限延長と実務上の留意点
令和8年度税制改正の目玉の一つが、個人事業承継計画の提出期限延長である。2026年3月31日までとされていた期限が、2028年9月末まで2年6か月延長された。
この延長は単なる猶予ではない。事業承継の準備期間を確保し、後継者の育成と事業の体制整備を促す意図がある。ただし、期限延長を理由に先延ばしにするリスクもある。承継計画の承認には審査期間がかかり、計画の見直しや追加資料の提出が必要になるケースも少なくない。
実務上、計画の提出にあたっては以下が求められる。事業の継続性の証明、後継者の適性の確認、承継後の事業計画の具体性である。特に不動産賃貸業を事業とする場合、賃貸管理の体制や収益性の見通しが審査の焦点となる。
期限延長を活用する際のポイントは、早期の計画策定と定期的な見直しだ。2028年9月末という期限は、あくまで提出期限であり、承認までのプロセスを考慮すると実質的な準備期間はそれより短い。
貸付用不動産の評価方法変更と2027年以降の節税構造
令和9年1月1日以降の相続・贈与から、貸付用不動産の評価方法が変更される。これは富裕層の資産承継戦略に根本的な影響を与える。
変更の核心は、相続開始前5年以内に対価を伴う取引で取得または新築した貸付用不動産について、取得価額の80%で評価される点だ。従来は路線価方式により、実勢価格の50〜60%程度で評価できるケースが多かった。新ルール下では評価額が実勢価格に近づき、節税効果が大幅に縮小する。
例えば、2023年に3億円で取得した賃貸用マンションを2027年に相続する場合を考える。従来の路線価方式ではおおむね1.5億円程度で評価できた可能性がある。新ルールでは2.4億円での評価となり、評価差は9,000万円に広がる。相続税率が30%台にかかる資産規模であれば、税負担は2,700万円増加する計算だ。
5年経過後は従来通りの評価方法に戻る。つまり、2022年以前に取得した貸付用不動産については、2027年以降の相続でも従来の評価方式が適用される。これが「5年ルール」の意味するものだ。
なお、不動産小口化商品については取得時期にかかわらず時価評価となる。REITや不動産特定共同事業法に基づく商品の節税効果は、事実上消失する。
不動産物納の条件と手続き:2026年時点の相続税納税実務と高級物件特有の審査ポイントも、納税資金の確保策として検討に値する。物納は現金納税が困難な場合の救済措置だが、高級不動産の場合は評価額の審査が厳格になる。小規模宅地等の特例と納税猶予の併用可能性
小規模宅地等の特例は、相続税の負担を軽減する重要な制度だ。居住用、貸付用、事業用のいずれかに該当する宅地等について、評価額を減額できる。
特定居住用宅地等については、相続税の課税価格を80%減額できる。適用限度面積は330㎡である。取得者は相続開始直前から被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得し、相続税の申告期限まで継続して居住し、かつ所有することが要件となる。
特定貸付用宅地等については、50%減額が適用される。限度面積は200㎡だ。貸付事業の規模や継続性が審査される。
特定事業用宅地等についても80%減額が適用され、限度面積は400㎡である。個人事業または会社の事業の用に供されていた宅地等が対象となる。
これらの特例と納税猶予制度の併用については、資産の性質と取得者の関係によって可否が異なる。例えば、個人事業承継計画に基づく事業用資産の納税猶予と、小規模宅地等の特例を併用する場合、事業の継続性と居住の要件が同時に満たされる必要がある。単純な併用はできず、個別のケースで検討が必要だ。
2026年における駆け込み節税のリスクと適正な資産承継
令和9年の貸付用不動産評価変更を前に、2026年の駆け込み需要が予想される。ただし、節税を目的とした急いだ資産組み替えには、税務上のリスクが伴う。
まず、総則6項による時価評価の指摘リスクがある。節税を唯一の目的とした取引は、税務署から租税回避行為とみなされる可能性がある。特に相続開始直前の不動産取得は、動機と時期の合理性が厳しく問われる。
次に、キャッシュフローの悪化リスクがある。節税効果を追求して利回りの低い不動産を取得すると、相続後の運用で収益不足に陥る。相続税の納税資金が節減されても、維持管理費や固定資産税の負担が持続可能でなければ意味がない。
さらに、後継者の承継意思と能力の不確実性がある。事業用資産の納税猶予を受けるためには、後継者が事業を継続することが条件となる。後継者の意向が確定していない段階で承継計画を策定すると、計画の変更や破棄が必要になる。
適正な資産承継のためには、節税効果とキャッシュフロー、後継者の準備状況の三つをバランスさせる必要がある。2026年5月時点で、令和9年の変更に対応するための猶予は約7か月ある。急ぐよりも、正確に計画を立てることが優先だ。
限定承認のメリット:高級不動産を手元に残す先買権と2026年の活用戦略についても、複数の相続人がいる場合の検討事項として理解しておくべきだ。限定承認は債務を限定して承認する制度だが、不動産の先買権と組み合わせることで、特定の資産を手元に残す戦略が可能になる。Koukyuu は麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)より。
