ペアローンの諸費用が2人分で60万円増える構造、3億円物件の隠れた損失
ペアローンの諸費用が2人分で60万円増える構造、3億円物件の隠れた損失
Koukyuu Realty
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港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。

2026年4月、国土交通省の住宅ローン動向統計は首都圏の新築マンション平均価格が1億2,840万円に達したことを示した。3億円以上の高級住宅市場では、夫婦の収入を合算したペアローンの採用が増えている。しかし、融資実行時に発生する諸費用が単独名義の1.6倍に膨れる構造は、多くの買主が見落としている。

諸費用の実態:5,000万円物件で60万円の差

ペアローンの諸費用増大は、保証料と事務手数料の「2人分化」に起因する。金融機関の実務では、借入人ごとに保証委託料と事務手数料が発生する仕組みが採用されている。

具体例で比較する。物件価格5,000万円、頭金1,000万円、融資額4,000万円のケースである。

項目単独名義ペアローン(夫2,000万円・妻2,000万円)
保証料40万円80万円(40万円×2)
事務手数料30万円60万円(30万円×2)
登記費用20万円15万円(持分登記の簡略化)
その他10万円5万円
合計100万円160万円

差額60万円は、融資額が同じ4,000万円であっても発生する。ペアローンでは2本の契約が成立し、各借入人に対して保証機関が個別に保証を付与するため、保証料が倍増する。事務手数料も同様に2人分が請求される。

3億円物件へのスケーリングを試算すると、保証料率0.8%・事務手数料率0.6%を前提に、単独名義で420万円の諸費用に対し、ペアローンは672万円と252万円の差が生じる。

持分登記と贈与税リスクの交差点

ペアローンを採用する場合、不動産の登記名義は原則として共有名義となる。夫婦それぞれの持分割合は、一般的に融資負担割合に応じて設定される。しかし、ここに税務上の落とし穴がある。

出資割合と登記上の持分割合が一致しない場合、差額が贈与とみなされる。例えば夫が頭金800万円とローン返済の8割を負担しながら、持分を5割とした場合、妻の持分3割相当が贈与扱いとなる。2026年時点の贈与税基礎控除は年間110万円であり、控除を超える部分に対して10%から55%の累進税率が適用される。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)についても、持分とローン残高の割合が一致しないと按分計算が必要となる。返済していない者は控除を受けられず、実質的に居住していない場合は控除自体が適用されない。これらの制約は、単独名義では発生しない。

Koukyuuの過去記事でも解説した通り、3億円超の高額融資では連帯保証人不要のケースが増えているが、ペアローンの場合は2人ともが連帯債務者となる構造が変わらない。

意思決定の困難さと「凍結不動産化」

共有名義の法的リスクは、諸費用の増大よりも長期的に重い。民法251条は、建物の変更行為(売却・建替え・増改築・解体)に共有者全員の同意を要すると規定する。管理行為(修繕・賃貸契約)については持分価格の過半数、保存行為(応急処置)のみ単独で可能となる。

相続により共有者が増えると、この同意形成は困難になる。夫婦2名の共有が、子2名への相続で4名に、孫世代へと進むと8名・16名と指数関数的に増加する。2024年4月の相続登記義務化(民法262条の2)と所在不明者の共有持分取得制度の導入は、この「所有者不明土地」問題への対応であった。

実務では、共有者3名以上になると1名の反対で売却・建替えが不能となるケースが頻発する。港区や渋谷区の狭小地に建つ3億円超の戸建てが、老朽化しても建替えできず資産価値を失うシナリオは、共有名義の構造的欠陥を示している。

破綻リスクの増大と離婚時の複雑化

ペアローンの返済は、夫婦どちらかの収入が途絶えると即座に滞納に直結する。単独名義と比較して、収入喪失のシナリオは夫婦2名分存在し、リスクは約3倍に増大する。団体信用生命保険(団信)に加入していても、2名ともが加入対象となるため、保険料も増加する。

離婚時の対応はさらに複雑である。共有名義かつ連帯保証関係にあるため、一方的な売却や名義変更が困難となる。財産分与での持分移転は贈与税リスクを伴い、住宅ローンが残存する場合は金融機関の承諾が必要となる。2026年2月の司法統計は、離婚後の住宅ローン支払い停止が債務整理の主要因の一つであることを示している。

固定資産税の負担分散も問題となる。納税通知書は代表者1人に届くが、他の共有者が「住んでいないから」と負担を拒否するケースが頻発する。民法253条で持分に応じた負担義務があるが、実際の回収は困難である。

高級不動産特有の譲渡所得控除と担保評価

3億円超の高級不動産では、譲渡所得控除の制約が重要となる。3,000万円特別控除は住宅ローン減除との選択制であり、共有名義で人数分の控除を受けられる一方、長期保有時の税率優遇(所有期間5年超で軽減税率)との総合的な検討が必要となる。

金融機関の担保評価も共有名義では不利になる。共有持分のみの担保を嫌う傾向があり、リフォームローンや事業資金の借入れに支障をきたす。3億円物件の持分1/2を担保に入れても、融資実行額は物件価値の3〜4割に留まるケースが一般的である。

法人契約での住宅ローン戦略も検討されるが、ペアローンと同様に共有名義の構造リスクは解消されない。

代替案:単独名義と賃貸併用の検討

ペアローンのデメリットを回避する代替案として、収入の高い一方を単独名義とし、もう一方の資金は賃貸料として定期的に支払うスキームがある。この場合、贈与税リスクは生じず、住宅ローン控除も最大限活用できる。ただし、実質的な居住者が登記名義人と異なる場合、居住の実態が疑われて控除が否認されるリスクは残る。

別居を前提とした法人スキームや、親族間の金銭消費貸借と組み合わせた構成も検討されるが、いずれも税務当局の実質課税に留意が必要となる。2026年4月から適用される親族間売買の時価80%評価基準は、別途解説した通り、相続税評価額と実勢価格の乖離を縮める方向で動いている。

Koukyuuは麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)よりお問い合わせください。

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