
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2026年4月時点のリバースモーゲージ市場規模
住宅金融支援機構が運営する「リ・バース60」の2024年度通年実績は、申請戸数1,484戸、実績戸数1,297戸、実績金額207.9億円となった。前年度比で申請戸数は8.7%減、実績戸数は6.2%減、実績金額は4.6%減という縮小傾向が続いている。2025年10~12月期の四半期実績はさらに鈍化し、実績戸数295戸(前年同期比24.4%減)、実績金額42.1億円(同35.1%減)に落ち込んだ。
この市場規模は、日本におけるリバースモーゲージの潜在需要世帯に占める利用率が約0.2%という極めて低い水準を反映している。米国の3.5%、韓国の1.9%と比較すると、日本の制度普及は未発達段階にある。50歳以上における認知度も20%程度にとどまり、金融商品としての認知浸透が進んでいない。
富裕層がリバースモーゲージを利用する実態
2025年10~12月期の申込者プロフィールは、平均年齢70.9歳、平均年収396万円、年金受給者比率61.0%という構成である。資金計画では平均所要額3,131万円に対し、平均融資額は1,615万円、毎月支払額は4.7万円となっている。
これらの数字は、リバースモーゲージの主要ターゲットが「ハウスリッチ・キャッシュプア」層であることを示している。資産価値の高い不動産を保有しつつ、日々の生活資金に余裕がない世帯が中心利用者となる。生活資金のみを目的とする契約者の平均融資実行額は約780万円に留まる。
資金使途の構成比は、戸建てリフォーム25.0%、新築マンション24.4%、注文住宅23.5%、借換え17.7%、中古マンション5.8%となっている。住環境の整備・改善が目的となるケースが7割を占め、純粋な生活資金調達は少数派である。
高級不動産を担保とした融資の構造的制約
リバースモーゲージの融資限度額は担保不動産の評価額に依存するが、日本の担保評価は土地中心の傾向が強い。この評価方法は、都心の高級マンションに対して構造的に不利な結果をもたらす。
高級マンションの資産価値は建物価値の比率が高く、土地の持分が相対的に小さい。担保評価が土地重視となるため、実勢価格と評価額の乖離が生じやすい。築年数制限や占有面積制限により、都心の高級中古マンションが融資対象外となるケースも存在する。
2025年10~12月期の地域別利用割合は、神奈川県15.4%、東京都11.0%、千葉県9.0%、大阪府8.4%となっている。首都圏の比率は高いものの、港区・渋谷区・千代田区などの都心3区に高級不動産を持つ富裕層の利用は限定的である。
アセットバックローン(ABL)完全解説:2026年版・富裕層・経営者層のための資産担保融資戦略では、高級不動産を活用した代替的な資金調達手法について詳述している。固定金利型導入がもたらす選択肢の拡大
住宅金融支援機構は2025年1月に固定金利型を導入した。金利上昇リスクを回避したい層のニーズに対応するもので、2025年7~9月期の実績は戸数15戸、金額2.0億円と前期比2.2倍の伸びを見せている。
変動金利型は2025年7~9月期に実績戸数256戸(前年同月比19.5%減)と減少傾向にある一方、固定金利型は66.7%増と対照的な動きを示している。金利環境の変化が利用者の選択に影響を与え始めている。
2025年10~12月期の時点で、すべての契約がノンリコース型となっている。借入者の死亡時に相続人が債務を引き継ぐ必要がなく、担保不動産を売却して債務を精算する仕組みである。相続対策としての利用可能性を示唆するものの、実際の利用実態は生活資金調達に留まっている。
「住まいの終活」意識と普及障壁
内閣府調査によると、自宅の死後の処分について「子供や配偶者等が住む」と回答する者が約6割に達する。具体的な見通しがない「とりあえず家族に任せる」意識が含まれる可能性があり、「住まいの終活」としての意識は未普及である。
リバースモーゲージの利用には、自宅を売却して債務を精算するという終活設計が前提となる。家族への住み継ぎを前提とする意識が根強い日本では、制度の受容に文化的な障壁が存在する。
資産保全とは何か:2026年の税制改正と東京都心不動産の現実では、相続税対策と住環境の両立について別のアプローチを検討している。富裕層にとっての代替策と市場展望
リバースモーゲージが富裕層の資金調達手段として機能しない理由は明確である。融資限度額の低さ、高級マンションの評価格差、生活資金目的の制度設計、これらが重なって実需に届かない。
2026年4月時点で、3億円以上の高級不動産を担保に数百~数千万円の融資を受ける制度は、資産効率の観点から非合理的である。資産価値を維持しつつ資金を調達したい場合、ABL(アセットバックローン)や証券化による不動産流動化、あるいは住み替えによるダウンサイジングなど、他の選択肢が現実的となる。
リバースモーゲージの市場拡大には、担保評価方法の見直し、高額融資への対応、認知度向上の3つが課題となる。現状の制度設計では、ハウスリッチ・キャッシュプア層の生活支援に留まり、富裕層の資産運用ツールには発展しない。
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