
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2026年4月時点で、東京都主税局は令和8年度固定資産税の土地・家屋価格の縦覧を開始した。2024年が評価替え年度であるため、2026年度は据え置き年度に当たる。それにもかかわらず、都内の高額マンションを保有するオーナーから「今年の税額通知が想定より高かった」という声が届く。軽減措置の期間終了・課税標準の段階的な戻し・令和8年度税制改正大綱が持ち込んだ新たなルールが重なるためだ。本稿では、マンションの固定資産税が上がる構造的な理由を整理し、2026年時点の税額目安とシミュレーション、富裕層が今すぐ確認すべき税制上の論点を具体的な数字とともに示す。
マンションの固定資産税の基本構造を解説
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・建物の所有者に課される地方税だ。税額の計算式は「課税標準額 × 標準税率1.4%」が基本で、都市計画税(最大0.3%)が加わる地域では合計1.7%が実効税率となる。マンションは土地と建物の双方に課税されるが、それぞれの課税標準の算出方法が異なる。
土地の課税標準マンション用地は専有面積に応じた敷地持分で按分した後、住宅用地の軽減措置が適用される。小規模住宅用地(一戸当たり200㎡以下の部分)は評価額の1/6、200㎡超の一般住宅用地は評価額の1/3が課税標準となる。高層タワーマンションでは一戸当たりの敷地持分が小さくなるため、土地分の固定資産税負担は相対的に低く抑えられる。
建物の課税標準建物は「再建築価格方式」で評価される。同等の建物を新たに建てた場合のコストを基準に、経年減点補正率を乗じて評価額が算出される。新築時は建設費のおよそ50〜60%が評価額の目安で、そこから毎年逓減する。経年減点補正率には下限(最低20%)が設定されているため、築年数が経過しても評価額がゼロになることはない。
都市計画税の加算東京都特別区内は原則として都市計画税の課税対象区域に含まれる。港区・渋谷区・千代田区いずれも税率は0.3%であり、固定資産税と合わせた実効税率は1.7%となる。坪単価が高い都心マンションでは、この0.3%の差が年間の税負担に数十万円単位で影響する。
マンションの固定資産税が上がる4つの理由
1. 新築軽減措置の期間終了
新築マンションには建物部分の固定資産税が1/2になる軽減措置がある。一般的な新築マンションは3年間、認定長期優良住宅は5年間が対象だ。この期間が終了した翌年度から、建物分の税額は倍増する。建物の固定資産税が軽減期間中に年間20万円だった場合、期間終了後は40万円になる。
令和8年度税制改正大綱では、この新築軽減措置の適用期限が2028年3月31日まで2年延長された。適用床面積の要件が50㎡以上280㎡以下から40㎡以上240㎡以下へ変更されている。東京都特別区内の特定都市再生緊急整備地域については下限が50㎡のまま据え置かれている点に注意が必要だ。
2. 評価替えによる評価額の上昇
固定資産税の評価額は3年ごとの評価替えで見直される。2024年が前回の評価替え年度であり、次回は2027年だ。2026年度は評価額が据え置かれる年に当たるが、2024年の評価替えで都心の土地評価額が大幅に上昇した物件では、その影響が2024年度から3年間継続する。南青山・元麻布・白金台といった地域では2024年の路線価が前回(2021年)比で10〜15%程度上昇した地点も複数あり、その分だけ土地の課税標準も切り上がっている。
3. 負担調整措置の段階的な解消
土地の固定資産税には「負担調整措置」があり、評価額が急騰した場合でも税負担が急増しないよう課税標準を段階的に引き上げる仕組みがある。この調整が進むにつれて、評価額の上昇分が徐々に税額に反映される。評価額の上昇から数年遅れて税額が上がるため、「なぜ今年だけ上がったのか」という疑問につながりやすい。
4. 大規模リフォームによる評価額の再算定
建物の主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)に手を加える大規模リフォームを実施した場合、建物評価額が再算定される可能性がある。内装や設備の入れ替えにとどまる範囲では評価額は変動しない。省エネ改修については令和8年度税制改正大綱で固定資産税の減額措置が2031年3月31日まで延長されており、適切に申請すれば税負担を抑える方向に働く。
2026年の税額目安とシミュレーション
マンション4000万円の固定資産税はいくらか
購入価格4,000万円の新築マンションで、専有面積60㎡・敷地持分5㎡程度を想定する。建物評価額を購入価格の約55%と仮定すると2,200万円、土地評価額を500万円(敷地持分5㎡×路線価100万円/㎡)とする。
- 土地の課税標準:500万円 × 1/6 = 約83万円
- 土地の固定資産税:83万円 × 1.4% = 約1.2万円
- 土地の都市計画税:83万円 × 0.3% = 約0.2万円
- 建物の課税標準(新築軽減中):2,200万円 × 1/2 = 1,100万円
- 建物の固定資産税:1,100万円 × 1.4% = 約15.4万円
- 建物の都市計画税:1,100万円 × 0.3% = 約3.3万円
- 軽減期間中の年間合計:約20万円
- 軽減終了後(4年目以降):約35万円
4,000万円台のマンションでは、軽減期間中の年間税額は20万円前後、軽減終了後は35万円前後が目安となる。購入時にこの増額を把握しているかどうかが、後悔の有無を分ける。
購入価格3億円のマンション(港区・新築・一般)
購入価格3億円の新築マンションで、専有面積80㎡・敷地持分10㎡程度を想定する。建物評価額を1億6,500万円、土地評価額を2,000万円(敷地持分10㎡×路線価200万円/㎡)とする。
- 土地の課税標準:2,000万円 × 1/6 = 約333万円
- 土地の固定資産税:333万円 × 1.4% = 約4.7万円
- 土地の都市計画税:333万円 × 0.3% = 約1.0万円
- 建物の課税標準(新築軽減中):1億6,500万円 × 1/2 = 8,250万円
- 建物の固定資産税:8,250万円 × 1.4% = 約115.5万円
- 建物の都市計画税:8,250万円 × 0.3% = 約24.8万円
- 軽減期間中の年間合計:約146万円
- 軽減終了後(4年目以降):約204万円
軽減期間終了の翌年度に税額が約58万円増加する計算になる。
購入価格8億円のマンション(渋谷区・中古・築10年)
購入価格8億円の中古マンションで、専有面積200㎡・築10年を想定する。建物評価額は経年減点補正で約70%水準の2億8,000万円、土地評価額は3,000万円(敷地持分15㎡×路線価200万円/㎡)とする。
- 土地の課税標準:3,000万円 × 1/6 = 500万円
- 土地の固定資産税:500万円 × 1.4% = 7万円
- 土地の都市計画税:500万円 × 0.3% = 1.5万円
- 建物の課税標準(軽減措置なし):2億8,000万円
- 建物の固定資産税:2億8,000万円 × 1.4% = 392万円
- 建物の都市計画税:2億8,000万円 × 0.3% = 84万円
- 年間合計:約484.5万円
購入価格の約0.6%が年間固定資産税の目安となる。都心の高額中古マンションでは建物評価額が依然として高水準に維持されるため、税負担も相応に重くなる。
「固定資産税が6倍になる」という誤解を解説
「なぜ固定資産税が6倍になるのか」という問いは、新築マンション購入者から頻繁に出る。「6倍」という表現は、住宅用地の軽減措置(1/6)が適用されない更地に転じた場合の土地税額の変化を指すものであり、居住用マンションに直接当てはまる話ではない。
居住用マンションの場合、税額が上がるタイミングと幅は次の通りだ。一般的な新築マンションは3年目終了後の4年目、認定長期優良住宅は5年目終了後の6年目に建物分の税額が倍増する。土地部分はほぼ変動しない。「6倍」ではなく「建物部分が約2倍」というのが正確な理解だ。
令和8年度税制改正が富裕層の不動産保有に与える影響
2026年度の税制改正で、固定資産税そのものより大きな影響を持つのが投資用不動産の相続税評価見直しだ。令和8年度与党税制改正大綱(2025年12月発表)は、2027年1月1日以後の相続から、相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産の相続税評価額を時価(取得価額の80%)に変更することを定めた。
従来は路線価ベースの評価が時価の30〜40%水準にとどまることが多く、高額マンションを購入・賃貸に出すことで相続税評価を圧縮するスキームが広く活用されてきた。この手法は2022年の最高裁判決(いわゆる「タワマン節税」判決)で既に揺らいでいたが、今回の改正でルール自体が書き換えられた形となる。
不動産小口化商品(不動産特定共同事業・信託受益権)も取得時期を問わず時価評価の対象となる。現行の評価額で贈与・移転を完了できる期限は2026年12月31日だ。この期限を意識して動く富裕層が都心の高額物件の取引を急いでいる背景がある。
2026年4月時点のタワーマンション節税規制と相続税評価の実態では、この改正の具体的な影響と対応策をより詳しく整理している。マンション購入で後悔した理由と固定資産税の関係
マンション購入後の後悔理由として頻繁に挙がるのが「保有コストの想定不足」だ。国土交通省の住宅市場動向調査(2025年度版)でも、購入後に「維持費・税金が想定より高かった」と回答する層は一定数存在する。後悔した理由のランキングでは「管理費・修繕積立金の値上がり」と並んで「固定資産税の増額」が上位に入る。
購入価格の0.3〜0.7%程度が年間の固定資産税の目安となるが、新築軽減措置の終了後に税額が倍増することを購入時に十分認識していないケースが多い。都心の高額マンションでは、固定資産税・都市計画税・管理費・修繕積立金を合算した月次の保有コストが購入価格の0.1〜0.15%に達することも珍しくない。3億円のマンションであれば月30〜45万円、年間360〜540万円規模の保有コストになる。この数字を購入前に把握しているかどうかが、後悔の有無を分ける大きな要因となる。
2026年に確認すべき軽減措置と節税の論点
新築軽減措置の延長と床面積要件の変更新築住宅の固定資産税1/2軽減措置は2028年3月31日まで延長された。適用床面積の下限が50㎡から40㎡に引き下げられたことで、コンパクトな都心マンションも対象に入る。東京都特別区内の特定都市再生緊急整備地域では下限が50㎡のまま維持されているため、物件の所在地と面積の両方を確認する必要がある。認定長期優良住宅として認定を受けた新築マンションは5年間の軽減期間が適用され、同じ評価額でも累計で数百万円単位の節税効果が生じる。
マンション長寿命化促進税制の終了2022年度に開始された「マンション長寿命化促進税制」は、2026年度(2027年3月)で終了する。一定の要件を満たす修繕積立金の引き上げを実施した管理組合に対して固定資産税の減額を認める制度だ。適用を受けるためには2027年3月31日までに要件を充足する必要があり、検討中の管理組合は期限を確認されたい。
省エネ改修と固定資産税減額省エネ基準を満たす改修工事を実施した場合、翌年度の固定資産税が1/3減額される特例がある。令和8年度改正でこの措置の適用期限も2031年3月31日まで延長されており、リフォームを検討している場合は改修内容と申請期限を確認することで税負担の軽減が可能だ。
高額マンション保有者が今すぐ取るべき行動
固定資産税通知書の精査2026年4月から6月にかけて各市区町村から固定資産税・都市計画税の納税通知書が届く。課税明細書で土地・建物それぞれの評価額・課税標準額・税額を確認する。評価額に疑義がある場合、縦覧期間(東京都は4月1日から5月31日)中に縦覧を行い、必要に応じて審査申出の手続きを取ることができる。
新築軽減措置の終了年度の把握購入時期から逆算して、軽減措置がいつ終了するかを確認する。終了後の税額を事前に試算しておくことで、保有コストの見直しや売却タイミングの検討に活用できる。1億円超の高額マンションでは、軽減終了後の増税額が年間50万円を超えるケースも珍しくない。高級マンションの固定資産税|1億円・8000万・3000万の実額シミュレーション【2026年】では価格帯別の実額を詳しく示している。
相続対策の期限の確認貸付用不動産の相続税評価が時価(取得価額の80%)に変更されるのは2027年1月1日以後の相続からだ。現行の路線価ベース評価での贈与・移転を完了できる期限は2026年12月31日となる。相続対策として不動産を活用しているケースでは、税理士・弁護士と連携した上でこの期限までに対応を完了させることが求められる。
Koukyuu は表参道・青山・西麻布をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談はこちらから。
