2026年、賃貸中物件の正当事由が認められない確率は47%
2026年、賃貸中物件の正当事由が認められない確率は47%
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2026年4月、法務省が公表した「借地借家法の更新拒絶等要件に関する調査研究報告書」が137件の裁判例を集計した。その結果、賃貸人側が提示した正当事由が認められたのは73件。勝訴率は53.3%にとどまる。

つまり、賃貸中物件を購入し、賃借人の明渡しを求めた場合、約47%の確率で更新拒絶が認められない。賃貸人は更新期間を迎えても賃貸契約を終了できず、賃借人はそのまま居住を継続する権利を持つ。収益物件投資のリスク計算において、この数字は無視できない。

正当事由の判断基準と裁判例の教訓

借地借家法第28条は、更新拒絶に「正当の事由」が必要と定める。具体的には、賃貸人の必要性、賃借人の損失、比較衡量の3要素が審査対象となる。

法務省報告書の分析対象137件のうち、建替え・建物の老朽化を理由に更新拒絶を求めたケースが68件と最多を占める。しかし、老朽化単独では認定されにくい構造が明らかになった。耐震性能不足を立証した46件のうち、正当事由が認められたのは28件。60.9%の認定率は平均を上回るが、約4割は棄却されている。

特に注目すべきは、2025年に確定した最高裁判決(令和7年3月19日)。築45年の木造アパートについて、賃貸人が建替えを主張したが、賃借人側が耐震補強での存続可能を反証。更新拒絶が認められなかった。この判例は、賃貸人の「建替えの必要性」に対し、賃借人が「修繕による存続可能性」を提示できることの重要性を示している。

保証賃料の数字が語らない、サブリース契約の法的構造と2026年の実態 でも触れたように、賃貸収益の安定性は契約書面だけでは担保されない。実際の権利関係と裁判実務のギャップを正しく理解することが、収益物件購入時のリスク管理の第一歩となる。

立退料の相場と税務上の4類型

正当事由が認められても、賃貸人は立退料の支払義務を負う。2026年現在の実務上の目安は家賃の6ヶ月分から10ヶ月分だ。都心部では賃料相場の上昇を反映し、差額賃料を加味した10ヶ月分程度の提示が求められるケースが増えている。

国税庁の税務処理(令和7年4月1日現在)は、支払目的により4類型に分類される。

譲渡費用:売却目的での立退きに該当。譲渡所得の取得価額算入または譲渡費用として損金算入される。 必要経費:賃貸継続のための建替え・修繕に伴う立退き。不動産所得の必要経費として処理される。 取得費:新規取得時に発生した立退料。取得価額に加算され、将来的な譲渡時の取得費となる。 土地取得費:借地権買戻しに伴う立退料。土地の取得費として資産計上される。

種類別の税務処理を誤ると、取得時のコスト計算から将来の譲渡損益まで歪む。購入時の契約書における立退料条項の明記方法が、税務リスクを左右する。

建替えか耐震補強か、賃貸人の戦略的判断

2026年4月時点のLIFULL健美家データによると、住宅系3種別(区分マンション・一棟アパート・一棟マンション)の全国平均価格は前月比マイナス。金利上昇・建築費高騰・建物ストック老朽化の三重圧力下で、賃貸人は「建替えか耐震補強か」の岐路に立っている。

建替えを選択した場合、賃借人の明渡しが前提となる。正当事由の認定率53.3%を乗じても、実現確率は約半分に過ぎない。さらに立退料6〜10ヶ月分に加え、交渉から明渡しまで1年以上要するケースも少なくない。仮に年間賃料600万円の物件で10ヶ月分の立退料を支払えば、600万円に交渉コストと時間的損失を加算する必要がある。

一方、耐震補強を選択した場合、賃借人は居住継続し、賃貸収益は途絶えない。ただし補強費用は賃貸人の負担となり、減価償却資産として処理される。築年数・構造・規模により費用は異なるが、木造3階建てアパートの場合、3000万円から5000万円程度を見込む必要がある。

更新料なし物件が増える東京の賃貸市場、年間40万円の差額が生む選択の論理 における分析と通じるが、賃貸市場の制度設計は「賃借人保護」の方向で進化し続けている。賃貸人側の柔軟性が求められる構造は、当面継続する。

2027年税制改正と相続税対策への影響

2027年1月1日以降に相続が開始されるケースから、相続税の「賃貸不動産5年ルール」が適用される。これは、相続人が被相続人から賃貸不動産を取得し、その賃貸を継続した場合、相続税額の計算上、5年間は賃貸割引が制限される制度だ。

具体的には、相続開始前3年以内に被相続人が賃貸目的で取得した不動産について、賃貸割引率が通常の30%から20%に引き下げられる。相続税評価額の算出において、賃貸中物件の節税効果が縮小する。

この改正は、賃貸中物件の「相続税対策としての魅力」を相対的に低下させる。生前の賃貸中物件購入が、相続税負担軽減の有効手段であった時代に変化が生じている。

さらに、2026年4月に施行された改正マンション関係法は、建物の老朽化や住人の高齢化を踏まえた管理組合の対応義務を強化。建替えの意思決定プロセスが複雑化し、賃貸中物件の建替え実現ハードルはさらに高まる可能性がある。

高級賃貸市場の変容と収益物件投資の再定義

LIFULL HOME’S調査によると、東京23区の「億超え」高級賃貸物件掲載数は5年で2倍以上に増加した。分譲タワーマンション価格の高騰により、「あえて買わない」富裕層が拡大している。

この動向は二重の意味を持つ。賃貸需要の高端化は賃料収益の向上につながる一方、賃借人側の交渉力も相対的に高まる。年間賃料1200万円を超える高級賃貸物件では、立退料の水準も比例して上昇し、賃貸人の負担リスクが拡大する。

賃貸中物件の購入を検討する際、単なる利回り計算に留まらないリズアセスメントが必要だ。正当事由の認定率53.3%、立退料6〜10ヶ月分、時間的コスト1年以上、建替え・耐震補強の戦略選択、2027年税制改正の影響。これらを総合的に勘案し、個別物件の法的リスクを精緻に評価することが、2026年の投資判断において不可欠となる。

ザ・レジデンス三田 のような新築高級物件では、賃貸中物件特有の法的リスクは存在しない。一方、築10年以上の中古物件においては、購入時点での賃借人の有無が、将来の資産価値と運用柔軟性を左右する。

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