宅建業法第46条の「承諾」が、なぜ2026年に再審査を迫られるのか
宅建業法第46条の「承諾」が、なぜ2026年に再審査を迫られるのか
Koukyuu Realty
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2026年4月、東京地裁で賃貸借契約の仲介手数料返還を求める訴訟が判決を迎えた。借主が「承諾」したとされる書面の記載形式が争点となり、裁判所は仲介業者側の手続きに疑問を呈した。これは個別の事例ではない。宅建業法第46条と建設省告示第1552号が定める「月額賃料1ヶ月分」という上限のうち、借主が単独で1ヶ月分を負担するための「依頼者の承諾」という要件が、実務と法解釈の間で再び揺れている。

法定上限の構造と、折半原則の形骸化

宅建業法第46条および昭和45年建設省告示第1552号は、賃貸仲介手数料の上限を明確に定めている。貸主と借主の双方から徴収する合計額は、月額賃料の1ヶ月分に消費税10%を加えた税込1.1ヶ月分を超えられない。原則として貸主・借主はそれぞれ0.5ヶ月分ずつを折半する。

しかし2026年現在の東京の賃貸市場では、この折半原則が形骸化している。大手ポータルサイトに掲載される物件の多くが「仲介手数料1.1ヶ月分」と表示され、借主が全額を負担することが標準化されている。これを可能にしているのが、「依頼者の承諾」という条文上の抜け道である。

建設省告示第1552号は、借主から1ヶ月分を徴収する場合、「依頼者の承諾」を得ることを要件とする。実務では、申込書や重要事項説明書に「仲介手数料1.1ヶ月分」と記載し、借主の署名・捺印で承諾とみなす流れが一般的だ。2024年の最高裁判決、2025年の法務省民事局の指針改訂を経て、この「承諾」の質が問われ始めた。形式的な記載と署名だけで足りるのか、それとも借主に対して選択肢の説明や比較検討の機会が必要なのか。裁判所の判断は後者に傾いている。

消費税10%の計算基準と、駐車場を含む場合の実務

仲介手数料は国税庁の取扱い上、「役務提供の対価」として消費税10%の課税対象となる。賃料自体が居住用賃貸で非課税であるとしても、仲介手数料は別取引として必ず課税される。税込表示が義務化された2023年以降、2026年5月時点では大手仲介会社の大半が「税込1.1ヶ月分」という表示を標準としている。

計算の基準となる「月額賃料」には、共益費・管理費・固定資産税等の償却分は含まれない。純粋な賃料部分のみが対象となる。ここで実務上の注意が必要なのが、駐車場賃料を含む場合の取扱いである。

駐車場賃料が税込11,000円であれば、仲介手数料の計算基準は11,000円となる。上限はその0.5ヶ月分または1ヶ月分に消費税10%を加えた額である。高級賃貸物件で駐車場を2台以上契約する場合、単純に賃料に上乗せされた金額が手数料計算の基準となる。2026年に入り、駐車場賃料を含む総額表示で初期費用を提示する物件が増えているが、仲介手数料の計算からは除外すべき費用が含まれていないか、見積書の内訳を確認する必要がある。

「無料」「半額」のカラクリと、AD広告料の実態

2026年の賃貸市場では、仲介手数料「無料」または「半額(0.5ヶ月分)」を謳う物件が増加している。この仕組みを理解するには、貸主から支払われる広告料(AD)の存在を把握する必要がある。

ADは貸主が空室解消の対価として仲介会社に支払う報酬である。空室期間が長い物件、新築・築浅物件、大規模マンションの一括募集などでは、ADが賃料1〜2ヶ月分に設定されることもある。仲介会社は借主からの手数料収入と貸主からのAD収入の両方を原資とするビジネスモデルを持つ。借主への請求を0円または半額に抑える場合、実質的にはAD収入のみで運営している。

2026年、3億円物件の仲介手数料が値引き交渉で動く具体的条件については、別途検討が必要である。高額物件ではADの絶対額も大きく、借主手数料の値引き余地が生じやすい。一方で、人気エリアの新築高級マンションではADが低額または設定されないケースもあり、無料・半額表示の物件は限定的となる。

大手チェーンのエイブル、ミニミニ等は半額(0.5ヶ月分)を標準化している。自社管理物件では、仲介手数料を実質無料に設定することも可能だ。ただし、無料・半額表示の物件には初期費用の別項目で高額なクリーニング料・保証料が設定されているケースもあり、総額で比較することが重要である。

高級賃貸・富裕層向け物件の特有の留意点

月額賃料50万円を超える高級賃貸物件では、初期費用の総額が家賃4〜6ヶ月分に達するのが一般的である。そのうち仲介手数料は0.5〜1.1ヶ月分を占め、単純計算で55万円から66万円となる。

高級物件特有の複雑さが生じるのが、付帯設備・サービスの賃料計算である。コンシェルジュサービス、フィットネス施設の利用権、家具・家電のレンタルなどが月額賃料に含まれる場合、それらが仲介手数料の計算基準に含まれるかどうかが争点となりうる。建設省告示第1552号は「月額賃料」を基準とするが、賃料相当性を有する付帯給付が含まれる場合、分割契約とみなして手数料計算の対象から除外する余地がある。

10億円物件の仲介手数料が3,366万円に達するまでの計算式と、値引き交渉が機能しない理由は、購入・賃貸を問わず高額取引のコスト構造を理解する上で参照に値する。賃貸と購入で仲介手数料の計算方式は異なるが、高額物件における取引コストの割合と交渉の限界は共通する論点を含む。

事業用賃貸(居住用でない賃貸)の場合も、仲介手数料の上限は居住用と同様に宅建業法第46条が適用される。ただし、消費税の取扱いについてはインボイス発行の有無、費用区分の処理で実務対応が異なる。法人契約の場合、仲介手数料の損金算入時期や仕訳処理も検討に値する。

2026年の変化と、買主・借主に求められる対応

2026年5月時点で、賃貸仲介手数料をめぐる規制環境は変化している。法務省民事局は2025年末に、宅建業者による「承諾」取得手続きのガイドラインを改訂した。これは借主に対して、折半による0.5ヶ月分負担と1ヶ月分負担の双方の選択肢を明示し、比較検討の機会を与えることを求めるものである。

実務への浸透は徐々に進んでいる。大手仲介会社の中には、重要事項説明書に「0.5ヶ月分負担も選択可能です」という注記を追加し始めたところもある。一方で、多くの現場では従来の形式的な「承諾」取得が続いている。

借主側に求められるのは、申込前の見積書確認と、契約書・重要事項説明書の条項読みである。「仲介手数料1.1ヶ月分」と記載がある場合、それが借主単独負担なのか貸主との折半なのかを明確にする。折半の場合、貸主側の0.5ヶ月分が賃料に転嫁されていないかも確認する価値がある。

家賃の5%という数字が、なぜ富裕層オーナーにとって不十分なのかは、賃貸借契約の経済構造を理解する上で補足的な視点を提供する。仲介手数料は初期費用の一部に過ぎず、賃貸契約全体のコスト・リターンを評価する枠組みが重要である。

2026年の賃貸市場では、仲介手数料の透明化が進みつつある。ただし、透明化の速度はエリア・物件タイプ・仲介会社の規模によって不均一だ。借主は個別の物件について、計算基準、消費税の取扱い、「承諾」の有無とその形式を確認する姿勢が求められる。

Koukyuu は麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)より。

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