
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
2026年4月1日、改正不動産登記法が施行された。これにより、所有権登記名義人は住所・氏名に変更が生じた日から2年以内に変更登記を申請する義務を負う。正当な理由なく怠った場合、5万円以下の過料が科される。宅建業法35条に基づく重要事項説明書、通称「35条書面」には、この登記変更義務の存在を売主・買主双方に説明する項目が新たに加わった。
この改正は、東京の高額不動産取引におけるリスク管理に直結する。港区や渋谷区、千代田区のマンション・戸建てを対象とする3億円以上の取引では、登記名義の齟齬が後の相続・売却で数百万円単位の損失を生む。宅建士は重説時に、登記簿謄本の記載事項と実態の不一致を確認し、35条書面にその旨を明記する責任を負う。
35条書面と37条書面の機能的分離
宅建業法における書面交付義務は、35条と37条の二つに大別される。両者は混同されがちだが、法的機能と交付時期が異なる。
35条書面(重要事項説明書)は、宅建士が契約締結前に相手方に交付し、物件の物理的状況、権利関係、取引条件を説明するもの。説明義務の主体は宅建士本人であり、無資格の営業担当者が代行することはできない。2026年5月現在、国土交通省が定める記載事項は30項目を超え、先述の登記変更義務を含む法令遵守事項もその対象となる。
対して37条書面(契約書面)は、契約締結の際に交付される。こちらには説明義務はなく、宅建士以外の従業員が作成・交付しても法的に問題ない。37条書面の役割は、契約内容の確定と書面による証明にある。
実務上の重要な違いは、35条書面の「説明」が契約前の情報開示を目的とするのに対し、37条書面の「記載」が契約後の紛争予防を目的とする点だ。高額取引では、35条書面の記載漏れが契約取消事由(宅建業法37条の2)や損害賠償請求につながるリスクが高い。
IT重説と電子署名の2026年実務基準
2022年5月の改正宅建業法施行以来、重要事項説明の電子化(IT重説)は売買・賃貸ともに全面解禁された。2026年現在、国土交通省「ITを活用した重要事項説明実施マニュアル」令和6年12月版が準拠文書となる。
IT重説を行うための要件は三つある。第一に、相手方の承諾を得ること。第二に、35条書面・37条書面ともに出力可能性を確保すること。第三に、改変検知措置として電子署名等を講じること。電子署名の方式は、電子署名法に基づく認証局発行のものに限らず、宅建業者が独自に改変検知できる仕組みを設ければ足りる。
高額不動産取引におけるIT重説の利点は、地理的制約の排除と文書管理の効率化にある。海外在住の買主や、複数拠点を持つ法人の決済プロセスと整合しやすい。一方で、電子署名の法的効力と、システム障害時のバックアップ体制は、取引前に確認しておくべき実務ポイントとなる。
省エネ性能情報の実質必須化と税制連動
2025年4月より、原則としてすべての新築建築物に省エネ基準適合が義務化された。さらに2028年1月1日以降に建築確認を受ける住宅は、一定の省エネ基準を満たさない場合、住宅ローン控除の対象外となる。
ノムコムの試算(2026年3月19日公表)によれば、省エネ性能証明の有無により、住宅ローン控除総額に最大約219万円の差が生じる。令和8年度税制改正では、省エネ等基準適合の既存住宅について、子育て世帯等の借入限度額が最大4,500万円に、控除期間が13年に拡充された。
この税制連動により、35条書面への省エネ性能情報の記載は実質必須化している。宅建士は、建築確認済証の有無、省エネ基準の適合状況、住宅ローン控除の適用可否を確認し、重説時に明示する必要がある。特に中古マンション・戸建ての取引では、建築時の基準適合状況と、リノベーションによる改修履歴の確認が重要となる。
固定資産税評価額と相続税評価の乖離
東京都主税局は2026年4月1日から、令和8年度固定資産税における土地・家屋の価格縦覧を開始した。買主は取引前に縦覧で評価額を確認可能となり、宅建士は35条書面の「固定資産税等の概算額」欄に、令和8年度評価額を反映した数値を記載することが実務標準となっている。
相続税評価額との乖離は、東京の都心3区で特に顕著だ。令和8年度税制改正大綱(2025年12月19日閣議決定)では、課税時期前5年以内に取得した貸付用不動産について時価評価が適用される。2027年1月1日以降の相続等から適用予定である。不動産小口化商品(不動産特定共同事業契約・信託受益権)は、取得時期を問わず時価評価の対象となる。
宅建士は重説時に、取得時期と評価方法を前提情報として明示することが実務上求められる。評価額の乖離が大きい物件ほど、相続税対策の観点から取得時期の確認が重要となる。
建物状況調査の期間差とデューデリジェンス設計
建物状況調査(インスペクション)の結果報告義務には、建物タイプによる期間差がある。共同住宅は2年以内、戸建住宅は3年以内である。この期間差は、区分所有と戸建が混在するポートフォリオを持つ投資家にとって、デューデリジェンスの期間設計に直接関わる。
35条書面には、インスペクションの実施有無と実施日を記載する義務がある。実施済みの場合は、その結果報告書の概要を説明する。未実施の場合は、その旨と未実施の理由を記載する。高額取引では、インスペクションの有無が価格交渉の材料となることも少なくない。
また、2026年改正で「拘禁刑以上の刑」への表記変更が行われた。宅建業法第5条第1項第5号(免許)および第18条第1項第6号(宅建士登録)における欠格事由を、「禁錮以上の刑」から「拘禁刑以上の刑」に変更したものである。懲役刑と禁錮刑の統合(拘禁刑一本化)に伴う整合的改正であり、35条書面の記載事項自体には直接的影響はないが、宅建士の資格要件を理解する上で留意が必要だ。
高額取引における文面の精緻化
3億円を超える不動産取引では、35条書面の一文一句が契約後の紛争に直結する。特に「代金・交換差金以外に授受される金銭」欄は、登録免許税の軽減措置の適用可否と税率を正確に記載する必要がある。令和8年度税制改正では、土地売買による所有権移転登記等の税率軽減措置が3年延長され、マンション建替事業等に係る権利変換登記等の免税措置も2年延長された。
保証賃料の数字が語らない、サブリース契約の法的構造と2026年の実態では、賃貸運用時の収益構造と法的リスクを整理している。取得時の35条書面作成と、運用時の契約管理は連続したリスク管理プロセスである。 団信に頼らない住宅ローン設計が、相続税を35万円変えるでは、金融機関の団信条件と独自の生命保険組み合わせの比較検討を示している。35条書面に記載される「金銭消費貸借契約の概要」欄は、こうした設計の前提となる。宅建士が全段階に同席し、35条書面の作成から契約締結、引渡しに至るまで一貫して対応する体制は、高額取引のリスクを最小化する上で不可欠だ。多くの東京の仲介会社が署名の瞬間まで無資格の営業担当に任せる構造を持つ中、この点は取引先選定の重要な指標となる。
Koukyuu は麻布・広尾・白金をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)より。
