貸付用不動産の「5年ルール」が相続税評価を変える、2026年の構造転換
貸付用不動産の「5年ルール」が相続税評価を変える、2026年の構造転換
Koukyuu Realty
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港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。

2025年12月19日に公表された令和8年度税制改正大綱は、不動産を活用した相続税対策の根幹を揺るがす内容を含む。特に注目されるのは、相続開始前5年以内に取得された貸付用不動産の評価方法見直しである。2027年1月1日以降の相続・贈与から適用されるこの変更は、路線価や固定資産税評価額による従来の圧縮効果を大幅に縮小する。

この記事は、2026年5月現在で有効な対策と、これから18ヶ月以内に検討すべき具体的な選択肢について、数字と制度の実際を整理する。

二重課税が生じる構造と、従来の回避策

不動産相続における所得税との二重課税は、相続人が取得した不動産を売却した際に顕在化する。相続税は相続時点の評価額に課せられ、売却時の所得税は譲渡所得に対して課される。取得費が低い場合、譲渡差益が大きくなり、実質的に二重に課税を受ける形になる。

従来、この構造を緩和する主な手段は三つあった。第一に、相続税取得費加算の特例である。相続税を納付した場合、その税額を取得費に加算できる。第二に、小規模宅地等の特例による評価額圧縮である。第三に、貸付用不動産としての評価圧縮である。賃貸用に供することで、路線価や固定資産税評価額をベースにさらに割引を適用し、相続税評価額を下げる手法が広く用いられてきた。

この第三の手法が、2027年から根本的に変わる。相続税取得費加算の特例が、港区・渋谷区の高額不動産で機能する条件については、別途詳述している。

「5年ルール」の具体的な内容と適用範囲

2027年1月1日以降の相続・贈与から、貸付用不動産の評価方法は以下のように変更される。

相続開始前5年以内に取得または新築された貸付用不動産については、従来の路線価・固定資産税評価額方式が適用されなくなる。代わりに、取得価額の80%を評価額とする。これは時価に極めて近い水準であり、従来の節税効果の大半が消失することを意味する。

例を挙げる。路線価100%の土地に、固定資産税評価額50%の新築賃貸マンションを建設した場合、従来は建物評価額にさらに賃貸割合を乗じて大幅に圧縮できた。2027年以降は、建設費の80%がそのまま評価額となる。1億円で建てた建物の評価額が8,000万円に固定され、従来の3,000〜4,000万円評価とは大きく異なる。

なお、土地と建物は別々に判定される。5年を超えて所有している土地に、相続開始前5年以内に賃貸住宅を建てた場合、土地は改正の対象外だが、建物は対象となる。この点の誤解が、2026年中の駆け込み取得で後々のトラブルを生むリスクがある。

2026年中に残された対策とその限界

改正の適用前に対策を完了したい場合、2026年12月31日までに贈与または相続を完了させる必要がある。しかし、単純な「駆け込み」には重大な落とし穴が存在する。

国税庁は、租税回避行為として「総則6項」を適用し、形式的な時期繰り上げを無力化する権限を持つ。相続開始が迫っている状況で、評価額圧縮のみを目的とした不動産取得は、時価評価を受けるリスクが高まる。2026年の相続税査定において、この観点からの指摘が増加している。

現実的な選択肢として、相続時精算課税制度の活用がある。令和6年1月1日以降、基礎控除110万円が新設され、暦年課税との使い分けが戦略的に重要になった。この制度は2028年12月31日までに贈与を受けることが条件であり、一度選択すると暦年課税に戻れない。令和6年改正が変えた相続時精算課税、不動産贈与で110万円の基礎控除が実務的に何を意味するかについては、こちらで詳しく解説している。

高額不動産への影響と納税資金計画の再検討

港区や渋谷区の高級不動産市場では、すでに2024年1月の居住用分譲マンション評価是正で節税環境は厳しくなっている。2026年改正は、賃貸用不動産という最後の大きな抜け穴を塞ぐ。

具体的な影響を数値で示す。麻布台ヒルズ周辺の新築タワーマンションを、賃貸用として1億5,000万円で取得した場合、従来の評価では相続税評価額は6,000万円前後に抑えられた可能性がある。2027年以降は1億2,000万円の評価となり、相続税の課税ベースが倍増する。

この変化は、納税資金計画に直結する。不動産は流動性が低い。評価額の上昇は、現金準備の不足を意味する。相続税の納付期限は10ヶ月。高額不動産を複数保有する世帯では、早期の流動性シミュレーションが急務となる。

相続直前の不動産取得が節税の主戦場ではなくなった、2026年の構造転換の背景については、こちらの記事も参照いただきたい。

実務上の留意点と専門家の選択

2026年の税制改正は、評価額圧縮型の節税から、実質的な資産構成・キャッシュフロー重視の戦略への転換を迫っている。不動産の選択基準は、節税効率から収益性と流動性へと移行する。

この状況下で、税理士・弁護士・不動産鑑定士・宅建士の連携が重要になる。特に、不動産の取得時期・目的・実態が、税務上の評価をどう受けるかについて、事前の専門家確認は不可欠である。

Koukyuu は、麻布・広尾・白金の物件検討にあたり、クライアントの税理士との情報連携を前提とした物件選定を行っている。3億円以上の取引において、評価額シミュレーションと納税資金計画の整合性は、価格交渉と同等に重要な検討項目となった。

今後18ヶ月の行動計画

2026年5月現在、具体的な行動として以下を検討すべきである。

第一に、現有の貸付用不動産の取得時期を確認する。5年を超える保有が評価圧縮の条件となる。第二に、相続時精算課税制度の選択有無を再検討する。110万円の基礎控除と、暦年課税との比較が必要だ。第三に、納税資金の流動性シミュレーションを更新する。評価額の上昇を見込んだ現金準備計画が求められる。

これらの検討は、2026年末までに贈与を検討する場合は特に急務である。ただし、形式先行の駆け込みは逆効果となるリスクを常に念頭に置く必要がある。

Koukyuu は港区・渋谷区・千代田区をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談)はこちらより。

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