
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
新宿区14.6%、都心6区12.2%。数字が示す市場の現状
国土交通省が2025年に公表した「新築マンション取得実態調査」は、東京の不動産市場に関する具体的な数値を初めて体系的に示した。調査対象は2018年1月から2025年6月に販売された新築マンション約55万戸で、登記情報をベースにした実態把握だ。
東京都全体における海外居住者の取得割合は、2025年1月から6月の期間で3.0%。大阪府2.6%、京都府2.3%と比較しても、東京への集中傾向は明確に読み取れる。なかでも注目すべきは新宿区の数値だ。同期間の海外居住者取得割合は14.6%に達しており、前年同期の1.7%から急増している。東京23区全体の取得者を住所国別に見ると、台湾と中国が上位を占める。
短期転売の実態も同調査が明らかにした。竣工後1年以内に売却された割合は、2024年1月から6月において東京都全体で8.5%、東京23区で9.3%、千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷の都心6区では12.2%に上る。政府はこの転売増加を確認しているが、それが外国人によるものかどうかは現行の登記情報だけでは特定できないと認めている。この「見えない取引」こそが、2026年の規制強化の直接的な背景にある。
外国人が日本で不動産を購入できるか?現行法の原則と解説
外国人が日本で不動産を購入できるか、という問いに対する答えは「できる」だ。日本の現行法は、外国人による不動産取得を国籍で制限していない。外国人も日本人と同等の永久所有権を取得でき、登記も可能だ。この原則は重要土地等調査法(2022年9月施行)の指定区域を除いて維持されている。
中国人はなぜ日本の土地を買えるのか
中国人が日本の土地を購入できる法的根拠は、所有権の取得を制限する明示的な国内法が存在しないことにある。民法・不動産登記法・宅地建物取引業法はいずれも国籍を取得要件として定めていない。経営管理ビザを活用した不動産事業法人の設立による在留資格取得スキームも広く実践されており、法律の枠組みの中で適法に機能している。
世界貿易機関の枠組みとの整合性が、国籍を直接的な規制基準にすることを難しくしている。日本経済新聞が2026年3月30日に報じたように、高市早苗政権は外国人の土地取得ルールの見直しを検討課題に挙げながらも、国籍を限定した規制はWTO協定との関係から困難と判断した。安全保障上重要な土地の取引規制については、国籍を問わない形での許認可制度の検討が進んでいる。
中国人が日本で不動産を相続した場合の相続税
相続の場面では別の論点が生じる。中国人が日本国内の不動産を相続した場合、相続税法は相続人の国籍や居住地に応じて課税範囲が変わる。日本国内に住所を持つ相続人は、国内外の全財産が課税対象となる無制限納税義務者に該当する。住所を持たない非居住者の場合でも、日本国内の不動産は国内財産として相続税が課される。中国人が日本の不動産を相続した場合、相続税は原則として発生する。税務上の取り扱いは個々の状況によって異なるため、税理士への確認が必要だ。
不動産の三大タブーとは何か
不動産取引における「三大タブー」とは、物件の資産価値と流動性を著しく損なう三つの属性を指す業界用語だ。具体的には、事故物件(心理的瑕疵)、再建築不可物件、違法建築物件の三つを指す。
事故物件は、自殺・他殺・孤独死等が発生した物件で、宅地建物取引業法に基づく告知義務が生じる。再建築不可物件は、接道義務を満たさないため建物を取り壊した後に新築できない土地で、担保評価が大幅に下がる。違法建築物件は、建築基準法に違反した増改築が行われた物件で、住宅ローンの審査が通らないケースが多い。
高額物件の取引では、これら三大タブーの有無を重要事項説明書で確認することが不可欠だ。外国人購入者が日本の不動産を取得する際も、この確認義務は日本人と同様に適用される。
2026年に施行・審議中の主要規制:5つの制度変更を解説
2026年は、外国人による不動産取得に関わる複数の制度が同時に動く年となった。それぞれの内容と施行状況を以下に解説する。
1. 不動産登記への国籍記載義務化
不動産登記法施行規則の省令改正により、2026年度から売買・相続・贈与等の移転登記時に取得者の国籍申告が義務化される。購入を禁止する規制ではなく、取引の実態を可視化するための情報把握が目的だ。虚偽申告には罰則が設けられる方向で検討されている。登記情報に国籍が記録されることで、前述の「見えない取引」の問題が一定程度解消される。
2. 外為法施行規則の改正
財務大臣が2025年12月16日に方針を表明した外為法改正は、届出義務の対象範囲を大幅に拡大する。現行制度では「投資目的」の購入のみが届出対象だったが、改正後は「居住用途」の購入も届出が必要になる。財務省は2026年4月を前に外為法施行規則の改正を完了させる計画を示しており、海外居住者が日本の不動産を取得した場合の報告義務が実質的に全取引に及ぶ。
3. 国土利用計画法施行規則の改正(施行済み)
2025年7月1日に施行済みのこの改正により、200㎡以上等の一定規模以上の土地取引では、取得者の国籍・住所・利用目的を都道府県知事に届け出ることが義務となった。売買契約の書類に国籍情報の記載が求められるため、実務上の手続きが変わっている。
4. 外国人土地取得規制強化法案(国会審議中)
2024年12月、国民民主党と日本維新の会が「外国人土地取得規制法案」を衆議院に再提出した。自民党・日本維新の会の連立政権合意書には「2026年通常国会で規制強化法案を策定する」と明記されており、立法化に向けた動きが具体化している。想定される内容は、外国人土地所有の登録制度の創設、安全保障上の敏感地域での取得制限、事前審査制度の導入だ。
5. 重要土地等調査法の見直し(2027年予定)
2022年9月施行の重要土地等調査法には、施行5年後の見直し規定が含まれている。2027年を目途に対象区域の拡大等の強化が検討されており、外国人の不動産取得規制が2026年以降どう展開するかは引き続き注視が必要な論点だ。
業界自主規制と転売禁止の実務的影響
法令上の規制と並行して、業界団体による自主規制も進んでいる。大手マンション供給事業者約160社が加盟する不動産協会は、引き渡し前の転売禁止を新方針として策定した。購入契約時に転売禁止条項を明示し、違反した場合は契約解除等の措置を取ることができる仕組みだ。
これまで竣工前の転売、いわゆる「青田転売」は法的に禁止されていなかった。売買契約書に転売禁止条項が入ることで、短期利鞘を目的とした取引の余地が制度的に狭まる。都心6区で12.2%に達していた竣工1年以内の転売割合が、今後どう推移するかは2026年下半期以降のデータが示すことになる。
不動産経済研究所が2025年6月に発表したデータによれば、東京の新築マンション平均単価は約136.4万円/㎡だ。港区や渋谷区の高額物件では坪単価600万円を超える案件も珍しくなく、3億円以上の物件における転売禁止条項の実効性は、今後の取引慣行を大きく左右する。
日本人富裕層が今確認すべきリスクと実務対応
一連の規制強化は外国人購入者を主な対象としているが、日本人の不動産オーナーや投資家にとっても無関係ではない。以下に実務的な論点を整理する。
登記情報の変化と資産管理不動産登記に国籍情報が加わることで、登記簿の記載事項が増える。法人名義で保有する物件については、2026年度から重要土地の取引を行う法人の代表者国籍に加え、役員や株式の過半数を保有する者の国籍も登録義務化される方向だ。読売新聞が2025年12月16日に報じたこの方針は、法人スキームを活用した資産保有の透明性を高める意図を持つ。日本人が設立した法人であっても、外国籍の役員や株主が一定割合を占める場合は届出が必要になる可能性がある。
売却時の買い手市場への影響外国人購入者に対する規制が強化されると、これまで外国人需要が価格を支えていた地域では売却時の選択肢が狭まるリスクがある。新宿区のように海外居住者取得割合が急増していたエリアでは、規制強化後の需給バランスの変化を見込んだ価格戦略の見直しが必要になる場面も出てくる。
税務・法務上の書類管理外為法改正により、海外居住者との売買取引では届出書類の管理が売主側にも求められる可能性がある。仲介会社経由の取引であっても、重要事項説明書や契約書への国籍情報の記載が標準化されれば、書類の保管と管理の体制を整える必要が生じる。
重要土地等調査法の指定区域確認政府の資料によれば、特定の地域では永住者を除く外国人による住宅取引契約に許可が必要とする時限措置が2025年8月から2026年8月まで適用されている。内閣官房が公表している制度運用状況を確認し、対象区域内の物件を保有・検討している場合は法律上の手続きを事前に把握しておくことが重要だ。
2026年以降の立法動向と市場への中長期的影響
現時点で確定している規制は、購入禁止ではなく情報把握と届出義務の拡大だ。国会で審議中の外国人土地取得規制強化法案が成立すれば、安全保障上の敏感地域での取得に事前審査制度が導入される可能性がある。この「事前審査」の対象範囲と手続き期間が、実務上の最大の不確実性となる。
2027年に予定される重要土地等調査法の見直しでは、対象区域の拡大が検討されている。現在の指定区域は防衛関連施設や国境離島の周辺に限定されているが、都市部の重要インフラ周辺への拡大が議論に上がっている。港区や千代田区の一部エリアが将来的に対象となれば、高額物件の取引実務に直接影響する。
国際的な文脈では、カナダが2023年に外国人による住宅用不動産購入を2年間禁止し、オーストラリアが外国人の既存住宅購入に厳格な制限を設けている事例が参照されている。WTOのサービス貿易一般協定との整合性の問題から、日本が国籍を直接的な取得禁止基準とする立法に踏み込む可能性は現時点では低いと見られている。
不動産の売買に関わる法律の解釈と実務対応は、規制の進展に伴い継続的な更新が必要になる。2026年4月以降の外為法施行規則の運用状況と、通常国会における土地取得規制法案の審議動向が、当面の注目点となる。住宅購入にかかる諸費用と税金の全体像については、2026年版の詳細ガイドも参照されたい。
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