
Koukyuu所属の宅地建物取引士が監修
港区・渋谷区・千代田区の高級物件取引に携わる国家資格保有者が、最新の不動産関連法・税制・市況データに照らして本記事を検証しています。宅地建物取引士は、日本国内のすべての不動産取引において法令上の重要事項説明を担う国家資格(合格率約15%)です。
不動産の相続税評価額の計算方法とは何か
不動産の相続税評価額の計算方法は、土地と建物を分けて算出する。土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額を基準とする原則は2026年4月時点でも変わらない。ただし2026年度税制改正(令和8年度税制改正大綱)により、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産については、2027年1月1日以降の相続・贈与から取得価額の80%を下限とする新ルールが適用される。
土地の評価では、国税庁が毎年7月に公表する路線価を用いる。路線価方式による計算方法は、路線価に土地の面積を乗じ、さらに土地の形状や接道状況に応じた補正率を適用する。2025年分の路線価では、港区南青山5丁目の骨董通り沿いが1平方メートルあたり1,070万円、白金台4丁目のプラチナ通り周辺が同580万円を記録した。路線価は公示地価の80%水準で設定されるため、実勢価格との乖離が大きい地域では評価額が取引価格を大きく下回る場合がある。
建物の評価は固定資産税評価額をそのまま用いる。固定資産税評価額は3年ごとに見直され、新築時の建築費の50〜70%程度に設定されることが多い。築年数が経過すれば評価額は逓減するが、RC造の高級マンションでは築10年でも新築時の70%程度を維持するケースが一般的である。
相続税評価額の計算はどうやって行うのか
相続税の不動産評価額はどうやって計算するのかという問いに対しては、路線価方式と倍率方式の2つの計算方法を理解する必要がある。路線価方式は市街地の宅地に適用され、路線価に土地の面積を乗じた後、個別の補正を加える。倍率方式は路線価が設定されていない地域で用いられ、固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を乗じて算出する。
路線価方式における個別補正は、土地の形状や接道状況によって評価額を増減させる。不整形地補正率は、土地の形状が正方形や長方形から大きく外れる場合に適用され、最大40%程度の減額が認められる。奥行価格補正率は、土地の奥行きが標準的な範囲(住宅地では10メートル程度)から外れる場合に適用される。間口が狭小な土地には間口狭小補正率が適用され、評価額が減額される。
港区麻布十番の路地奥にある旗竿地を例に取ると、路線価が1平方メートルあたり300万円、面積が80平方メートルの土地の場合、単純計算では2億4,000万円となる。しかし不整形地補正率0.7、間口狭小補正率0.9を適用すると、評価額は「300万円×80平方メートル×0.7×0.9=1億5,120万円」となり、約37%の減額となる。
建物の評価額は固定資産税評価額をそのまま用いるが、賃貸用の場合は借家権割合(通常30%)を控除する。自用の建物評価額が5,000万円の賃貸マンションであれば、「5,000万円×(1−0.3)=3,500万円」が相続税評価額となる。
どれが適用されるか:2026年度税制改正による5年ルール
2025年12月19日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱により、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産の相続税評価額の計算方法が根本的に変わる。従来は路線価または固定資産税評価額を基準とした評価が認められていたが、2027年1月1日以降の相続・贈与からは取得価額の80%を下限とする新ルールが適用される。港区麻布・白金台・青山エリアで収益物件を保有する資産家にとって、この変更は相続対策の前提を覆すものである。
令和8年度税制改正大綱によれば、相続開始日から遡って5年以内に購入した貸付用不動産は、路線価評価額と取得価額の80%を比較し、高い方を相続税評価額とする。2026年度税制改正の詳細では、この5年ルールが適用される具体的な範囲として、賃貸マンション・賃貸アパート・貸しビル・駐車場用地などが列挙されている。自宅として使用する居住用不動産は対象外だが、二世帯住宅の賃貸部分や、自宅兼賃貸併用物件の賃貸部分には適用される点に注意が必要である。
どれが5年ルールの対象となるかは、不動産の用途と取得時期で判定する。相続開始日から遡って5年以内に「取得」した貸付用不動産が対象となる。ここでいう取得には、売買による購入だけでなく、贈与・交換・代物弁済なども含まれる。ただし相続による取得は含まれない。また、自宅として購入し、その後賃貸に転用した場合、取得日は購入時点であり、賃貸開始時点ではない点に留意する必要がある。
どうして5年ルールが導入されたのか
どうして不動産の相続税計算方法が変更されたのかという問いに対しては、相続直前の駆け込み的な不動産購入による過度な節税を防止する目的があった。従来は、現金1億円を相続直前に都心の収益物件に転換することで、相続税評価額を5,000万円程度まで圧縮できるケースがあった。路線価が実勢価格の50〜60%程度に設定されている地域では、このような評価減が可能だったためである。
国税庁は2022年の最高裁判決を受けて、著しく評価額が低い不動産については個別に評価方法を見直す方針を示していた。令和8年度税制改正では、この方針を制度化し、一律に5年という期間を設けて取得価額基準を導入した。5年という期間設定は、相続対策としての不動産購入と、通常の資産運用としての不動産投資を区別する基準として設定されたものである。
5年ルールの導入により、相続開始前5年以内に購入した貸付用不動産は、取得価額の80%と路線価評価額を比較し、高い方が相続税評価額となる。具体例を挙げる。2023年に港区麻布台で取得価額5億円の賃貸マンション1棟を購入し、2028年に相続が発生した場合(2027年1月1日以降の相続のため新ルール適用)を考える。路線価による土地評価額が2億8,000万円、建物の固定資産税評価額が1億2,000万円、合計4億円と算出されたとする。従来であればこの4億円が相続税評価額となったが、改正後は取得価額5億円の80%である4億円と比較し、同額のため4億円が評価額となる。
一方、路線価評価額が3億円だった場合、取得価額の80%である4億円の方が高いため、4億円が相続税評価額となる。つまり路線価評価による節税効果が事実上消失する。
3000万円の不動産を相続したら相続税はいくらか
3000万円の不動産を相続したら相続税はいくらですかという問いに対しては、被相続人の総資産額と法定相続人の数によって答えが変わる。相続税の計算方法を具体的に解説する。
被相続人が3000万円の不動産のみを保有し、法定相続人が配偶者と子1人の計2人の場合を想定する。基礎控除額は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」となる。総資産3000万円は基礎控除額4,200万円を下回るため、この場合は相続税は発生しない。
一方、被相続人が3000万円の不動産に加えて金融資産5000万円を保有し、法定相続人が子1人のみの場合を計算する。総資産8000万円から基礎控除額「3,000万円+600万円×1人=3,600万円」を控除すると、課税遺産総額は4,400万円となる。子1人が全額を相続するため、相続税額は「1,000万円×10%+3,400万円×15%=610万円」となる。
3000万円の不動産が自宅であり、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)が適用できる場合、土地部分の評価額を80%減額できる。土地の評価額が2000万円、建物が1000万円の内訳であれば、特例適用後の評価額は「2,000万円×20%+1,000万円=1,400万円」となり、相続税額は大幅に減少する。
いくら相続税がかかるかは、このように総資産額・法定相続人の数・特例の適用可否によって大きく変動する。3000万円という金額だけでは相続税額を確定できず、被相続人の財産全体を把握する必要がある。
相続税の計算手順と基礎控除額の仕組み
相続税の計算方法は、まず被相続人の全財産を評価し、債務と葬式費用を差し引いて課税価格を算出する。この課税価格から基礎控除額を控除したものが課税遺産総額となる。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される。法定相続人が配偶者と子2人の計3人であれば、基礎控除額は4,800万円となる。
課税遺産総額を法定相続分で按分し、各相続人の取得金額に応じた税率を適用して相続税の総額を算出する。相続税の税率は累進課税で、1,000万円以下が10%、3,000万円以下が15%、5,000万円以下が20%、1億円以下が30%、2億円以下が40%、3億円以下が45%、6億円以下が50%、6億円超が55%である。
具体例として、課税遺産総額が2億円、法定相続人が配偶者と子2人の場合を計算する。法定相続分は配偶者2分の1で1億円、子がそれぞれ4分の1で5,000万円ずつとなる。配偶者分1億円に対する税額は1,000万円×10%+2,000万円×15%+2,000万円×20%+5,000万円×30%=2,300万円。子1人分5,000万円に対する税額は1,000万円×10%+2,000万円×15%+2,000万円×20%=800万円。相続税の総額は2,300万円+800万円×2=3,900万円となる。
この総額を実際の遺産取得割合で按分し、各種控除を適用して各相続人の納付税額を確定する。配偶者には配偶者の税額軽減があり、法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額までは相続税がかからない。
どちらを選ぶか:居住用不動産と貸付用不動産の評価額比較
自己居住用の不動産は5年ルールの対象外であり、従来通り路線価方式で評価される。このため、同じ時期に同額で購入した不動産でも、自宅か賃貸用かで相続税評価額が大きく異なる事態が生じる。どちらを選ぶかによって、相続税額に数千万円の差が生じることもある。
例として、2024年に渋谷区松濤で4億円の新築マンションを購入したケースを考える。自宅として使用している場合、路線価評価額が2億8,000万円であれば、相続税評価額は2億8,000万円となる。一方、同じ物件を賃貸に出していた場合、取得価額4億円の80%である3億2,000万円と路線価評価額2億8,000万円を比較し、高い方の3億2,000万円が評価額となる。この差額4,000万円は、相続税率が30%の場合で1,200万円の納税額の差を生む。
小規模宅地等の特例も考慮すべき要素である。自宅として使用していた土地については、330平方メートルまで評価額を80%減額できる特定居住用宅地等の特例が適用される。賃貸用の場合は200平方メートルまで50%減額となる貸付事業用宅地等の特例が適用されるが、減額割合・面積ともに居住用より不利である。5年ルールと小規模宅地等の特例を組み合わせると、居住用と貸付用の評価額格差はさらに拡大する。
港区・渋谷区・千代田区における実勢価格と評価額の乖離
東京都心3区では、実勢価格と路線価の乖離が大きい地域が多い。2025年の公示地価と路線価の比較では、港区元麻布3丁目の住宅地で公示地価が1平方メートルあたり420万円、路線価が同336万円と80%の比率を維持している。一方、千代田区一番町では公示地価が同380万円に対し路線価が同304万円とやや乖離が小さい。
新築マンション価格との比較では、乖離はさらに顕著である。Brillia一番町の3LDK住戸は2026年4月時点で4億7,990万円で取引されている。専有面積が約120平方メートルとすれば、1平方メートルあたり約400万円である。土地の持分を考慮した路線価評価では、この半額程度になることが多い。
ザ・パークハウスグラン三番町では3LDKが4億1,800万円で取引されており、同様の価格水準である。千代田区番町エリアは皇居に近く、文教地区として格式が高いため、実勢価格が路線価を大きく上回る傾向がある。5年ルールの導入により、こうした高額物件を相続対策として購入する手法の効果は大幅に減殺された。ただし、5年を超えて保有すれば従来通りの路線価評価が適用されるため、長期的な相続対策としての不動産活用は依然として有効である。
相続税シミュレーションと納税資金の確保
不動産を多く保有する資産家にとって、相続税の納税資金をどう確保するかは重要な課題である。相続税は原則として現金一括納付が求められ、申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内である。
港区白金台で自宅(評価額3億円)と賃貸マンション2棟(評価額各2億円)を保有し、金融資産が1億円ある場合を想定する。総資産は8億円、基礎控除額を4,800万円とすれば課税遺産総額は7億5,200万円となる。配偶者と子2人が法定相続分で相続する場合、相続税の総額は約2億4,000万円と試算される。配偶者の税額軽減を適用すれば配偶者の納税額はゼロとなるが、子2人で合計約1億2,000万円を納税する必要がある。
金融資産が1億円しかない場合、納税資金が不足する。この場合の選択肢は、(1)賃貸マンションの一部を売却する、(2)延納制度を利用する、(3)物納制度を利用する、の3つである。
延納は相続税を分割払いする制度で、担保の提供が必要である。延納期間は最長20年だが、利子税が年3.6%(2026年4月時点)かかる。物納は相続財産そのもので納税する制度だが、適用要件が厳しく、延納によっても金銭納付が困難な場合に限られる。また物納財産は収納価額(相続税評価額)で引き取られるため、実勢価格との差額分は事実上の損失となる。
最も現実的な選択肢は、相続開始前に賃貸マンションの一部を売却し、納税資金を確保しておくことである。ただし売却時には譲渡所得税が課税される点に注意が必要である。
2026年以降の不動産を活用した相続対策の方向性
5年ルールの導入により、相続直前の駆け込み的な不動産購入による節税は封じられたが、長期的な視点での不動産活用は依然として有効である。相続開始の5年超前に取得した貸付用不動産は従来通り路線価評価が適用されるため、早期に対策を開始することが重要である。
自宅については5年ルールの対象外であり、小規模宅地等の特例も適用できるため、相続対策としての有効性は変わらない。渋谷区松濤・港区南麻布・千代田区番町といった格式ある住宅地で、実勢価格が路線価を大きく上回る物件を自宅として保有することは、資産保全と相続対策を両立させる選択肢となる。
賃貸用不動産については、5年超の長期保有を前提とした計画が求められる。築年数が経過すれば固定資産税評価額も逓減するため、評価減効果は時間とともに大きくなる。ただし賃貸経営としての収益性も考慮する必要があり、立地・建物グレード・管理体制を慎重に検討すべきである。
生前贈与との組み合わせも選択肢となる。暦年課税の基礎控除110万円を活用した現金贈与を継続しつつ、不動産は長期保有して相続時に承継する戦略が考えられる。相続時精算課税制度を利用して不動産を生前贈与する方法もあるが、贈与時の時価で評価されるため、5年ルール導入後は慎重な判断が必要である。
不動産小口化商品と任意組合型スキームへの影響
2026年度税制改正では、不動産小口化商品のうち任意組合型・匿名組合型についても評価方法が見直された。従来は組合財産である不動産を路線価で評価し、出資割合に応じて相続税評価額を算出していたが、改正後は取引価額の100%で評価することが原則となった。
任意組合型の不動産小口化商品は、複数の出資者が任意組合を組成し、組合が不動産を取得・運用するスキームである。出資者は組合財産である不動産の共有持分を持つ形となるため、従来は不動産の相続税評価と同様に路線価評価が認められていた。1口1,000万円で販売される商品が多く、相続税評価額が700万円程度になるため、現金で保有するより30%の評価減が可能だった。
改正後は、任意組合型であっても取引価額、つまり出資額の100%で評価される。このため節税効果は消失し、現金で保有する場合と相続税評価額が変わらなくなった。ただし、組合が5年超前に不動産を取得していた場合の経過措置については、2026年4月時点で国税庁の詳細な通達が待たれる状況である。
匿名組合型は出資者が営業者に金銭を出資し、営業者が不動産を取得・運用するスキームで、出資者は不動産の所有権を持たない。こちらも従来は一定の評価減が認められていたが、改正後は出資額の100%評価が原則となった。
専門家による個別評価の重要性
不動産の相続税評価は、路線価・固定資産税評価額といった基準があるものの、個別の事情により補正が必要となるケースが多い。土地の形状が不整形である、接道条件が悪い、高低差がある、といった要因は評価額を減額する方向に働く。一方、角地である、複数路線に接している、といった要因は増額要因となる。
2026年税制改正の要点解説によれば、5年ルールの適用においても、取得価額の算定方法や、取得時期の判定について解釈が分かれるケースがあると指摘されている。特に建築中の物件を購入した場合の取得時期、リノベーション費用を取得価額に含めるかどうか、といった論点については、税理士・不動産鑑定士の専門的な判断が必要である。Koukyuuは麻布・広尾・白金台をはじめとする東京の格式ある住宅地を対象とした、取扱下限3億円のプライベート・バイヤーズエージェンシーです。初回相談から引渡しまで、有資格の宅建士本人が一貫して担当します。個別のご相談より承ります。
